ホックニーと印象派画家に出会う旅

2024.06.17

Moon room : ホックニーの月夜の絵を集めたムーン・ルーム© Victoria Okada

ホックニーの自画像を解説する展覧会責任者カラム＝ルヴェール氏© Victoria Okada

ホックニーとモネ：ルーアン美術館　ホックニー「Normandism」展© Victoria Okada

　デイヴィッド・ホックニーといえば数年前、プールと人物を描いた1972年の作品が生きている画家として史上最高値で競り落とされ、一般的にも一躍有名となった1937年イギリス生まれの画家。2019年からノルマンディーに定住して活動を続けている。絵画媒体としてのiPadに注目し、発売当初からこれを駆使して独自の世界を築き上げた。ルーアン美術館で9月22日まで開催中のNormandismと名付けられた展覧会では、そんな彼の最近の作品約30点を常設展示に組み込むことで、同美術館の所蔵作品と対話させている。絵筆を持った自画像の周りには、彼の家に出入りする人々の肖像が、モディリアーニやルノワールの人物画と並んでいる。iPadのタイムラプス機能を利用し制作過程を追えるようにしているのも面白い。また、月のある風景を描いた作品15点ほどを一堂に集めた「ムーンルーム」は圧巻。

Exposition concept art : ナダールの写真館で開催されていた第1回印象派展を再現©Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay

Exposition 3D - overpaint : ナダールの写真館で開催されていた第1回印象派展を再現©Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay

La Grenouillère 3D overpaint ：パリ近郊のセーヌ川沿いの村「ラ・グルヌイエール」で制作する画家たち©Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay

Le Havre 3D overpaint：ル・アーヴルの港で『印象・日の出』を制作するモネ©Excurio - GEDEON Experiences - musée d'Orsay

　オルセー美術館で大好評開催中の「パリ1874年　印象派の発明」展（3月号参照）では、バーチャルリアリティで第1回印象派展が擬似体験できるスペースも。当時建設中のガルニエ・オペラ座のすぐそこの、ナダール写真館で開催された印象派展の様子を、公私文献を徹底的に調査しできる限り忠実に再現。モネ、ドガ、ピサロ、モリゾ、セザンヌや、印象派の普及に決定的な役割を果たした画商デュラン゠リュエルが登場し、書簡などをもとに仮想会話が展開される。重要な絵画には解説が加わる他、時折、サンラザール駅や郊外のセーヌ河岸、ノルマンディーなどにワープ。ル・アーヴルの港で『印象・日の出』を描くモネに出会うこともできる（入場は11歳から。8月11日まで）。リールからメトロで30分のトゥルコアンのウジェーヌ・ルロワ美術館では、オルセーからの特別な貸与を中心に約60点の絵画で構成された「自然を描く」展が。屋外制作が生み出した多様性と斬新さを俯瞰できる（6月24日まで）。かつて印象派画家たちの「食堂」だったオンフルール近郊のサン・シメオン農場（現在は5つ星リゾートホテル）のビストロLa Boucaneでは、画家たちが当時食していたメニュー Menu de la mère Toutain を9月22日まで再現。