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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

フランスの夏の音楽祭と準備中の展覧会

 バシュロー文化相は200以上の音楽祭運営関係者と懇談した結果、2月半ば、夏季の音楽祭は開催する方針であると発表。屋外開催、これまでの「立ち見」コンサートも全て着席とし、最高5000席までという基本条件を打ち出した。また、国立医療研究所の協力のもと、3月にマルセイユで観客1000人のテストコンサートを2回にわたって開催し、結果を今後の状態と兼ね合わせて開催要項を練るとした。

 それ以前の1月30日と2月6日、12の劇場の総裁とアート分野のプレス関係者が相次いで美術館の再オープンを求める嘆願書を政府に提出した。欧州各国で美術館を再開する動きに呼応したもの。そんな中、多くの美術館は再開を見通してすでに新しい展覧会を準備している。そのうち、オービュッソンの「国際タペストリー都市Cité internationale de la Tapisserie」では、宮崎駿アニメの世界をタペストリーにする計画が進んでいる。


『もののけ姫』のタペストリー制作が進行中
© Cité internationale de la Tapisserie

 まず『もののけ姫』をモチーフにした作品の制作が今年3月に始まり、2023年末に完成予定。現在トールキンの『指輪物語』をテーマに14作品を制作するプロジェクトが進行中で、すでに9作品が実現している。
https://www.cite-tapisserie.fr/

 パリのラ・ヴィレットのグランド・アール La Grande Halle de La Villetteでは、4月14日から大規模なナポレオン展が開催予定。日本では根強い人気を誇るナポレオンだが、本国フランスでは独裁者としての顔が強調されることが多く、多くの人からなお拒否され続けている。そんな人物の明暗を様々な角度から追う野心的な展覧会。ふだん3人程度の学術委員会に8人もの権威が名を連ねているのは異例で、力の入れようが伺える。
https://expo-napoleon.fr/

 逆に、先月号でお伝えしたグラン・パレの「白と黒で」展は、結局1月末に中止が発表された。これまで何度か延期となり、オープンを待つのみだったが、衛生条件が改善されないことからやむなく中止となった。代替策としてヴァーチャル展覧会を楽しむことができる。
https://www.grandpalais.fr/fr/billets-individuels

 パリ市現代美術館パレ・ド・トーキョーでは、折鶴一つにつき1ユーロをパリの緊急社会援助機関SAMU socialに寄付するというキャンペーンを開催し、送られた千羽鶴を館内にインスタレーションとして展示している。


Origami for life
©️ Palais de Tokyo

◇初出=『ふらんす』2021年4月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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