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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

2025年ラヴェル/ブーレーズ生誕記念イヤー

 2025年は音楽分野で多くのアニヴァーサリーを迎える。特に注目されるのが、ラヴェル生誕150周年だ。パリのフィルハーモニーに隣接する音楽博物館では、6月15日まで「ボレロ」展を開催中。『ボレロ』という作品を通して、ラヴェルの人物像や音楽への姿勢を紹介している。会場には世界各地で上演された『ボレロ』の映像が散りばめられているほか、ラヴェルが晩年を過ごしたパリ郊外の家(現在はラヴェル博物館)から貸し出された生活用品や、個人的なオブジェを多く展示。これらを通じて彼の性格が音楽にどう表れているかを探る試みがなされている。興味深いのは、技師で発明家だった父が描いた機械の図面などから、ラヴェルが子供の頃から機械に興味を示し、これが緻密なオーケストレーションに表れていることがよくわかることだ。また、彼が所有したメトロノームを『ボレロ』のテンポに合わせたり、プロ級の腕前だったプロコフィエフとチェスを指した際の盤を再現したり、実際に彼が着ていたベストを展示したりと、演出にも工夫が凝らされている。


ボリス・リプニツキ撮影のラヴェル © Boris Lipnitzki-Roger Viollet


技師で発明家だったラヴェルの父ジョゼフ・ラヴェルのデッサン © Julie Toupance


ラヴェルが所有していた神戸製のからくりおもちゃ © Julie Toupance


『ボレロ』の衣装例 © Victoria Okada

 一方、2025年はピエール・ブーレーズ生誕100年でもある。1月始め、フランス文化省で文化大臣が正式に「ブーレーズ年」の開幕を宣言する式典が執り行われた。彼は20世紀半ばに現代音楽の方向性を決定づけた作曲家の一人で、現代音楽の第一人者と考えられている。仏国立音響音楽研究所(IRCAM)を設立したほか指揮者としても活躍し、世界的に大きな影響力をもっていた人物だが、それまでの伝統を一掃するかのような作風は賛否両論を巻き起こした。現在ではその作品は現代音楽の古典として扱われ、定期的に取り上げられている。今年でオープン10周年を迎えるパリのフィルハーモニーの建設はブーレーズが長年強く提唱してきたもので、館内の「ピエール・ブーレーズ大ホール」では2025年を通してパリ管弦楽団を初め内外のオーケストラや音楽家が彼の作品を演奏するほか、初出版楽譜を含む校訂版全集が出版される予定。また日本とも関係が深く、1989年には高松宮殿下記念世界文化賞を、2009年には京都賞を受賞している。
 今年はさらに、サティ没後100年、ビゼー没後150周年および『カルメン』初演150周年など、他にも多くの記念年が重なり、各地で様々なイベントやコンサートが予定されている。また、パリ・オペラ座のガルニエ宮が150周年を迎えるが、詳細は機会を改めてお届けしよう。


ピエール・ブーレーズ © Philippe Gontier


ブーレーズ生誕記念コンサートから © Ava du Parc

 

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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