パリ市立劇場再オープンと秋冬の展覧会
再オープンしたパリ市立劇場のエントランスホール
©Joséphine Brueder - Ville de Paris
パリのど真ん中、シャトレ広場に、シャトレ劇場と向かい合わせに建つパリ市立劇場。7年間の大規模な改装・修復工事を終えて、10 月はじめに再オープンした。この機会に名称も「Théâtre de la Ville-Sarah Bernhardt」と改称。これは、ここがかつて、19世紀末の大女優サラ・ベルナールの本拠地で、彼女の名を冠していたことにちなんでいる。再オープンのプレイベントとして、シャトレ劇場と提携して、9月から10月にかけて1か月間、各週末にFête de la placeと銘打った路上祭を開催(仏語に堪能な人ならこれがFaites de la placeとの語呂合わせだとお分かりだろう)。なんとパリの交通の要衝であるシャトレ広場を各週末に通行止めにし、特設舞台を設けて、ダンス、詩を交えたパフォーマンス、音楽など、朝から夜までどの年齢層でも楽しめる盛りだくさんの企画を提供。オープニングイベントは10月7日夕刻から、25時間ノンストップのプログラムで新しい門出を飾った。同劇場はコンテンポラリーな演劇・ダンス・音楽を主軸に、保健衛生、スポーツ、科学などの分野とのコラボレーションも含めた多様なプログラムを組んでいる。パリ市立劇場は他に、シャンゼリゼ通りからほど近いエスパス・カルダンと、モンマルトルにある小劇場アベス劇場を擁しており、今後は3劇場でダイナミックに展開していく。
Grande salle fin du chantier : 新装となったパリ市立劇場の大ホール
© Théâtre de la ville Nadège Le Lezec
さて、今秋から明年初めにかけてとくに大規模な展覧会が開かれており、美術ファンを堪能させている。オルセー美術館では、画家ファン・ゴッホがオーヴェール・シュル・オワーズで過ごした最期の2か月に制作した作品70数点を一挙に公開。関連展覧会として、オーヴェール城では、アムステルダムのゴッホ美術館が綿密に制作した複製を交え、この地でのゴッホの日常を彷彿させる展示を公開。近くにあるガシェ医師の家も当時の様子に沿ってより忠実に修復され、再オープンした。パリ市立近代美術館では、フランスでも数十年ぶりとなるニコラ・ド・スタールの大規模な回顧展が、またルイ・ヴィトン財団ではマーク・ロスコの回顧展が開催されている。さらにオランジュリー美術館ではモディリアーニ展が。画商ポール・ギヨームにも光を当て、画家が手がけた彫刻や、アフリカ美術との関係を明快に示す作品などもあり興味は尽きない。
Expo Van Gogh Orsay : オルセー美術館の「オーヴェール・シュル・オワーズでのヴァン・ゴッホ」会場風景
© Victoria Okada
Château d'Auvers Expo Van Gogh : オーヴェール城の「ヴァン・ゴッホ 最期の旅」展より 日本美術の影響を紹介する展示
© Victoria Okada
Nicolas de Stael : ニコラ・ド・スタール展入り口
© Victoria Okada
Mark Rothko n° 14 :
Mark Rothko, No. 14, 1960
Huile sur toile
290,83 cm x 268,29 cm
San Francisco Museum of Modern Art -
Helen Crocker Russell Fund purchase
© 1998 Kate Rothko Prizel & Christopher Rothko - Adagp, Paris, 2023
Expo Modigliani : オランジュリー美術館のモディリアーニ展会場風景
© Victoria Okada
◇初出=『ふらんす』2023年12月号