生き残りを求めるフランスの芸術活動
5月11日から外出制限が徐々に緩和されているフランスだが、大規模な集会は依然禁止されており、芸術に携わる人々にとっては通常化への道のりは遠い。先月紹介したウェブ上での芸術活動だが、大部分がフリーランスで働くアーティストを支援するべく、報酬を生み出すシステムが手探りで試みられている。
最も顕著な例として、若いヴィオラ奏者リュドヴィク・ルヴィオノアLudovic Levionnoisのアイデアを受けてできたClassique sur Canapé(ソファで聴くクラシック)というコンサートシステムがある。4、8、12のコンサートを15、30、45ユーロという低価格でパック購入し、毎週木曜日18時からメールで受け取ったリンク先でライヴ発信されるコンサートを自宅で楽しむというもの。演奏会は、クラシック専門ユーチューバーの司会で、20代から30代のまだキャリアが浅い演奏家を中心に、普段からサロンコンサートを開催しているパリの個人宅で開催。演奏後には視聴者との交歓の時間も。初回では100人以上が視聴しており、まだ「市場」に確固とした場所を持っていない若い演奏家にとっては格好の演奏機会となっている。5月下旬には著作権機関のSACEMが、3月中旬から7月にネットでライブ配信されたコンサートに報酬を分配する決定を下した。
Classique sur Canapéの配信映像
これと並行して、医療機関で働く人を支援する芸術活動も増えている。CDレーベル、ワーナークラシックスはすでにSymphonie pour la vie(いのちための交響曲)と題したCDをリリースし、全収益を医療関係者に寄付。また、サンジェ・ポリニャック財団は、Rendez-vous à Parisというウェブコンサートシリーズを開始した。若手音楽家などを積極的に支援する同財団所有の、19世紀建築の豪華サロンで週2、3回行われる無観客ライヴコンサートをMedici.tvで配信し、毎回パスツール研究所への寄付を募る。
分野に限らず、裏方として働くプロデューサー、プレス担当官、音響・舞台係なども大部分がフリーランスだ。彼らの中には政府が発表したフリーランス救済処置の対象にならない人も多いため、5月11日、フィガロ紙上に支援を求める共同声明を発表。セクターの存続のために事業者に課せられる社会保障費の全面控除など、政府処置から一歩踏み込んだ具体的な改善策を提示・要求している。
◇初出=『ふらんす』2020年7月号