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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

訪れてみたい、二つの「邸宅」美術館


ヴィラ・マジョレルのサロン
©MEN-Cliché Siméon Levaillant, 2020

 流れるような曲線と植物モチーフによる洗練されたデザインで19世紀終わりから20世紀初めにかけて栄えたアール・ヌーヴォー。フランスではパリの他、東部のナンシーがガラス細工を中心に活発な拠点だった。そのナンシーにあるヴィラ・マジョレルVilla Majorelleは、館全体が細部に至るまでアール・ヌーヴォー様式で設計された総合芸術作品だ。設計は当時まだ大きな経験が皆無だった26歳アンリ・ソヴァージュで、芸術刷新の若きいぶき溢れる見事な邸宅となっている。この度、数か月間の全面的な修復工事を経て、2月15日に再オープンした。修復では、マジョレルが没した1926年以前の状態にできる限り近づける試みがなされている。細かい内装の修復は2021年から翌年まで予定されており、とくにバスルームを元の状態に戻す工事などが予定されている。https://musee-ecole-de-nancy.nancy.fr

 もう一つ、大幅な修復を施してこの春に再オープンした邸宅美術館がある。

 パリのモンソー公園に面してひっそりと佇む東洋美術専門のセルヌスキ美術館Musée Cernuschi。2018年秋には「ジャポニスム2018」の一環として若冲の《動植綵絵》展が開かれ話題を呼んだ(本誌2018年11月号)。有名なギメ東洋美術館(パリ16区)よりもずっとこじんまりとしているが、それもそのはず、「オテル・パルティキュリエHôtel particulier」と呼ばれる豪華な私邸をそのまま美術館にしたものだ。ここでも大規模な修復・改装工事が行われて、3月4日に再オープンした。1871年から73年にかけてアジアを旅して美術品を蒐集したアンリ・セルヌスキは、日本と中国の美術を中心にした東洋美術の一大コレクションを有していた。彼のエスプリを忠実に伝える展示内容に加え、20世紀の東アジアのアーティストに焦点を当てた新しい部屋も設けられている。www.cernuschi.paris.fr


セルヌスキ美術館の正面玄関
©Pierre Antoine

◇初出=『ふらんす』2020年4月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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