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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

フィルハーモニーの日本週間/ラ・フォル・ジュルネ2019

フィルハーモニーの日本週間


© Charles d'Hérouville

 ジャポニスム2018も2月に大詰めを迎え、最後の催しが各地で行われた中、パリのフィルハーモニーでは昨年秋に続く第2回目の「日本週間」が2月6日から10日まで開催された。今回は伝統芸能だけではなく、コンテンポラリーや子ども向けの出し物も。その中でも重要な位置を占めていたのは、能4作(翁、葵の上、清経、砧)と狂言2作(木六駄、二人袴)で、5日間にわたって毎日2作ずつ(土曜日は2公演4作)上演された。和太鼓(大江戸助六太皷)は、アマチュアがアトリエを通して共にパフォーマンスをしようという趣旨で盛況だった他、フランス人による落語や三味線のマスタークラスなど、日本文化がフランス人の中にも浸透していることを示す催しも。しかしなんと言っても大人気だったのは、作曲家久石譲が自ら指揮しピアノを弾いた演奏会だ。チケットが発売されるや否やすぐに売り切れ、当初2回の予定だったが3回目のコンサートを追加。全国紙のLibération とLe Monde も事前にインタビューを大きく掲載するなど(筆者はこれらのインタビューで通訳を担当した)、大スター並みの扱いで大成功を博した。聴衆は宮崎アニメファンの比較的若年層から、家族連れ、中年層、さらにはお年寄りまで多様。アンコールで演奏された「隣のトトロ」のテーマに大喜びだった。

ラ・フォル・ジュルネ2019


© Yoshihiro Maejima

 本家ナントのラ・フォル・ジュルネが、1月30日から2月3日まで開催された。今年のテーマは「Carnets de voyage 旅の手帖」。ルネサンス・バロックからエレクトロまで、例年に勝るとも劣らず多彩なプログラムが聴衆を魅了し、さらなる大成功を収めた。とくにカンティクム・ノーヴムはシルクロードの音楽をテーマに地中海地域・中東のアーティストや日本の津軽三味線、尺八奏者と共演し、命に内蔵する生のリズムというべき音楽を奏でて熱狂的に迎えられた。またヴァイオリンのディアナ・ティシチェンコは昨年パリで開催のロン・ティボーコンクールで第一位を受賞しており、ナントのファイナルコンサートでも大喝采を浴びている。チェロのアナスタシア・コベキナやフルートのマチルド・カルデニーニは欧州ではすでに有能な若手として人気の演奏家。来日公演が楽しみだ。

◇初出=『ふらんす』2019年4月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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