フランスの文化施設再開 新しい美術館
4月末、大統領が5月半ばから文化施設を再開すると発表したことを受けて、5月19日から映画館、劇場、コンサートホールなどが再開された。屋内施設では、当面は収容人数の35パーセントを上限とし、かつ最大800人まで。観客同士、グループ同士の間は2席とるという規定を遵守する。カフェやレストランなどはテラスのみで、商店は客一人につき8平米を確保。状況を見ながら段階的に収容人数、客数を増やしていく。
これを機会に、新しいアートスペースと、以前から改装工事で閉鎖されていた美術館も相次いでオープンした。
大きな話題は、現代アートの個人コレクションで世界最大級を誇るフランソワ・ピノー・コレクション(350人のアーティスト、作品数1万点)を展示する「ブルス・ド・コメルス Bourse de Commerce」のオープンだ。ポンピドゥーセンターとルーヴルの間に位置し、かつては麦、トウモロコシなどの商品市場だった19世紀末の建物を、安藤忠雄の設計で美術館に改装。完璧な円形が美しいガラス張り天井ドームを最大限に生かし、高さ9メートルにとどめた展示スペースは光に溢れていて心地よい。新しいアートスポットとしてすでに人気を博している。
現代美術館としてリニューアルした、ブルス・ド・コメルス
もう一つの新しいスポットは、オテル・ド・ラ・マリン Hôtel de la Marine。コンコルド広場に面した18世紀の建物は、フランス革命まで王室の調度品を保管する場所で、1789年以降は海軍省の本拠だった。ここも博物館として全面的に刷新され、18世紀の豪華な室内を今に残す場所として、6月から一般公開されている。
博物館として刷新された、オテル・ド・ラ・マリン
© Ambroise Tézenas
新装オープンとなる美術館の中では、古代からのパリの歴史を辿るカルナヴァレ美術館が、4年間にわたる改装・修復工事に伴う閉鎖期間を経て、5月29日に新装オープンした。新しい展示スペースで特筆すべきは、中石器時代(紀元前9600~6000年)から16世紀中葉の歴史を紹介する地下スペース。また、展示されていた3800点もの作品と、主だった内装が修復された。
モード博物館のガリエラ宮Palais Gallieraでは「ガブリエル・シャネル展」が7月18日まで延長。昨年10月、2年間の拡大工事後の再オープン記念展覧会として始まったものの、たった2週間後に外出制限で一時閉鎖となった展覧会。女性モードに大革新をもたらしたシャネルの、初の大回顧展。
◇初出=『ふらんす』2021年7月号