秋の芸術シーズン開幕!
9月に入るや、早くも新年度の芸術活動が活発に始動。2年間の規制はすでに過去のものとなり、2019年以前とほとんど変わらないコンディションで開催されている。
展覧会では、ポンピドゥーセンターで来年1月2日までジェラール・ガルーストGérardGaroust展が。フランス現代絵画の巨匠の一人ガルーストは、今年76歳。『神曲』や『ドンキホーテ』などの文学作品や古今の作家・哲学者などの他、のちに改宗したユダヤ教や、狂気に近い精神世界などにインスパイアされた作品を描き、その写実性といびつな形を同時に備えた絵画は、人々の目を引かずにはおかない。会場には大規模なイスタレーションも設置され、回顧展にふさわしい内容となっている。
ガルースト展の大規模のインスタレーション
La Dive Bacbuc, 1998 Collection particulière, France Photo © Adam Rzepka © Adagp, Paris, 2022 ; Courtesy Templon, Paris-Brussels-New York. Photo Johansen Krause
ガルースト「ピノッキオとサイコロ」
Pinocchio et la partie de dés, 2017, Huile sur toile, 160 x 220 cm, collection particulière © Adagp, Paris 2022. Courtesy Templon, Paris-Brussels-New York. Photo Bertrand Huet-Tutti
今までほとんど知られていなかった画家アンドレ・ドゥヴァンベーズAndré Devambez(1867-1944)。初めてのまとまった展覧会がプチパレで12月31日まで開かれている。アカデミックな作風と並行して、頭でっかちにデフォルメしたイラスト風の絵を描くようになり、群衆を描写した絵や商業ポスター、絵本など、幅広いジャンルで多彩な才能を発揮。絵画史上初めて、飛行機から地上を見下ろした作品を描いたのも彼だ。漫画チックな画風の作品も多く、見ていて楽しい気分になる。1937年の商業博覧会でエッフェル塔からイエナ橋を見下ろした群衆の絵や、メトロのホームからあふれんばかりの人々を描いた絵には思わず親近感を覚えてしまう。
ドゥヴァンベーズ「飛行船バス」
Le Dirigeablobus, 1909. MUDO, musée de l’Oise Photo © RMN-Grand Palais / Adrien Didierjean
「1937年産業博覧会にて、エッフェル塔2階からの眺め」
L’exposition industrielle de 1937, vue du second étage de la Tour Eiffel, 1937. Photo © Musée des Beaux-Arts de Rennes / Jean-Manuel Salingue 2021
ドゥヴァンベーズ「敵の船を引くガリバー」
Gulliver enlève la flotte, 1909. Collection Maïk Bouchayer. Photo Jacques Boulay
ドゥヴァンベーズは飛行機から地上を見下ろす絵も描いた
André Devambez, Les avions fantaisistes, vers 1914. MUDO, musée de l’Oise Photo © RMN-Grand Palais / Hervé Lewandowski
リュクサンブール美術館ではドレスデン国立美術館の「アートキャビネット」から選りすぐりのオブジェを集めた『世界の鏡』展が。16世紀半ば、ザクセン選帝侯の「驚異の部屋」に端を発するコレクションには世界中から様々な品が集められたが、展覧会では、稀少または未知なものを、人々(貴族)がどのように捉えたのかを見せる。2023年1月15日まで。
「世界の鏡」展 展示風景 中央は真珠母の皿、インド、グジャラート州、16世紀末?
筆者撮影
音楽では、全国の先陣を切って、パリのフィルハーモニーが、9月6日と7日、アメリカのフィラデルフィア管弦楽団の二つのコンサートでシーズンを開幕。2日目のコンサートの終了後には、芸術監督で指揮者のヤニック・ネゼ=セガンが、フランス芸術文学勲章のオフィシエ章を受章した。
◇初出=『ふらんす』2022年11月号