モードの都パリ
パリはモードの都。これまでも、服飾博物館であるガリエラ宮や装飾博物館などの専門施設が、モードを前面に出した展覧会を多く開催してきた。しかし、今年は、美術館がこぞってモードをテーマにした展覧会を開催している。その先陣を切ったのはルーヴル美術館だ。1月末に開幕した「Louvre Couture」展では、1960年から2025年にかけて創作された、総数45の世界中のメゾンおよびクリエーターの作品を展示している。特筆すべきは、普段は訪れる人が少ない「美術品」セクションをメインに据えた広大なスペース(総面積9000㎡)を利用している点である。そこに常設されている所蔵品と、それらの品に見られるモチーフ、マチエール、色彩などにインスピレーションを受けた服を対比させる形で展示している。その洗練された展示センスには感嘆のため息が出るほどだ。圧巻は、ナポレオン3世のアパルトマンに設置されたドレスの数々だろう。第二帝政期のハイソサエティの絢爛たる雰囲気を彷彿とさせる空間に、豪華なドレスがさまざまなポーズで配置されている。その様子は、まるで舞踏会に赴く前の談笑のひと時を再現しているかのようでもある。7月21日まで(www.louvre.fr)。
Louvre Couture, Givenchy © Musée du Louvre _ Nicolas Bousser
Louvre Couture, Dior © Musée du Louvre _ Nicolas Bousser
二つ目の展覧会は、プティ・パレで7月20日まで開催されている「宝飾デッサン」展。同美術館の所蔵庫に眠っていたデッサンが、今回初めて大々的に一般公開されている。副題に「クリエーションの秘密」とある通り、デッサンと実際に制作された宝飾品を比較するほか、アートとしての宝飾デザインに光を当て、その特殊性を紹介する。また、同美術館が所蔵する貴重な宝飾品も併せて展示。プティ・パレではさらに、5月7日から「ウォルト」展が開幕する。オートクチュールの父とされるシャルル・フレデリック・ウォルトは、贅を尽くしたドレスでパリの上流社会を魅了した。展覧会では、ガリエラ宮の所蔵品をはじめ、メトロポリタン美術館、フィラデルフィア美術館、ヴィクトリア&アルバート美術館などから借り受けた品を含む、総数400点余りを展示。体を締め付けるクリノリンから、ベル・エポック期の流れるようなシルエットのドレスまで、モードの変遷をたどることもできる。9月9日まで。いずれの展覧会も、事前予約が望ましい(www.petitpalais.paris.fr)。
Dessins de bijoux 展ポスター
Charles Frederick Worth, Robe du soir dite « robe aux lys », vers 1896 © Paris Musées Palais Galliera, musée de la Mode de la Ville de Paris
Worth, Robe du soir flapper, dit Charleston © Paris Musées Palais Galliera, musée de la Mode de la Ville de Paris