夏は展覧会で五感を刺激する体験を!
今年の夏は、例年にないほど展覧会が充実している。その筆頭が、シャンティイ城で10月5日まで開催中の「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」展である。この時祷書は、世界で最も有名な中世写本のひとつとして知られているため、誰もが一度は目にしたことがあるだろう。19世紀に同城のオーマール公コレクション収蔵となり、彼の遺言により門外不出とされて以来、一般公開もこれまでにわずか二度しか行われていない。今回の展覧会は、修復作業に伴う特別な機会として開催されている。メインは、ランブール兄弟によって描かれたカレンダー部分だ。1月から12月までの各月を飾るミニアチュール画が綴じから外され、一堂に展示されているのは極めて稀。精緻な装飾と宗教的場面で彩られたそのほかのページは、本来の形を保ったまま2週間ごとにページを変更して展示。また、世界中から関連作品を集め、ランブール兄弟と同時代のミニアチュール画家たちの交流や影響関係を包括的に紹介する内容となっている。主催者が「これが最後の公開となる可能性が高い」と語る同展は必見。
「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」展入り口横に掲げられたポスター ©Victoria Okada
ベリー公の最も豪華なる時祷書 © Muriel Vatrin
一方、近年のフランスでは、夏の展覧会スタイルそのものにも変化が見られる。かつては常設展や既存の特別展をそのまま維持するのが主流であったが、現在はバカンス客や特定層を意識した、より参加型・体験型の催しが急増している。たとえばルーヴル美術館では、2019年から中庭クール・カレにて無料の屋外上映会を開始し、今や夏の定番イベントとなった。上映は日没後の23時頃に始まり、選ばれる作品も多彩で、映画史に残る古典から、当年のカンヌ映画祭受賞作まで幅広く、展示作品に関係がある映画も。会場は19時30分に開場し、DJセットや若手アーティストのライブ演奏などが雰囲気を盛り上げる。開催中のマムルーク展では、ビデオゲームの協賛を得て、展示品を盛り込んだ特別シークエンスをルーヴルから限定配信するというイベントも。昨年、パリ五輪のフェンシング会場としても使われたグラン・パレでは、複数の無料展覧会が同時開催。中心となるのはインスタレーション作品で、非日常的な没入空間が来場者を迎える。「フランスにおけるブラジル年」の一環としてブラジル文化を紹介する展覧会も多彩だ。加えて、改修中のポンピドゥー・センターとの共同企画展も注目に値する。今や「観る」から「体験する」へと広がりを見せている芸術。夏の思い出として五感を刺激する体験をしてみてはいかがだろう。
2023年のルーヴルでの無料野外映画上映会Conéma Paradiso Louvreの様子 © Cinéma Paradiso
ビデオゲーム Age of empires au Louvre 特別シークエンス © Musée du Louvre
エルネスト・ネトのインスタレーション ポスター © Grand Palais