モリエール生誕400年
1622年生まれのモリエールは今年生誕400年を迎える。彼の劇団が元となって生まれたコメディ・フランセーズ劇場では、モリエールの誕生日である1月15日から7月25日まで、コメディ・フランセーズ、ヴィユー・コロンビエ両劇場で、『タルテュフ』『人間嫌い』『病は気から』『ドン・ジュアン』など主要作品を網羅。2021年に大ヒットした『町人貴族』(本誌2021年8月号参照)も再演される。ルーヴル美術館に隣接するストゥディオ小劇場ではコメディ・バレエ『強制結婚』の他に、モリエールの戯曲をもとに脚色を加えた創作なども鑑賞できる。コメディ・フランセーズはこの機会に、フランスバロック音楽の一大研究実践センターであるヴェルサイユ・バロック音楽センターと協力体制を組んだ。
コメディ・フランセーズでのモリエール『町人貴族』
© Agathe Pourpeney-Divergence
これまでモリエール劇はテキスト重視の演劇として上演されることが多く、音楽はエピソード的なものとして最小限に抑えられるか、新しく作曲または編曲されたものが使われていた。しかしもともとモリエールは作曲家のリュリやシャルパンティエと共同で戯曲を構想し、音楽と密接に結びついた上演を目指していた。その意図をよりよく伝えようと、コメディ・フランセーズと上記バロック音楽センターは、共同でモリエールをテーマにした「エクスポッドキャスト」の配信を11月に開始した。オンライン展覧会とポッドキャストを融合したもので、6回からなり、コメディ・フランセーズの俳優が参加し、同劇場所蔵の資料なども「展示」。また、同音楽センターは、パリ郊外の5つのリセの生徒がコメディ・バレエ『病は気から』を上演する教育プログラムを実施する。バロック分野で定評のあるプロの劇団、舞踏団、オーケストラ、合唱団が指導にあたる。
不思議にも今年は、モリエール作品は演劇の舞台よりオペラ劇場で上演される機会が多い。ボルドー・オペラでは年始から『町人貴族』が上演された他、アヴィニョン・オペラでは『ドン・ジュアン』をもとにした喜劇(1月)、『ジョルジュ・ダンダン』(2月、衣装はオートクチュールのクリスティアン・ラクロワ)、『病は気から』(6月)を上演。いずれもバロック音楽を専門にした演奏家が音楽を担当する。
https://www.comedie-francaise.fr/fr/evenements/moliere-2022
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◇初出=『ふらんす』2022年2月号