《マンガカフェ》初演/「競馬を描く」展
《マンガカフェ》初演
《マンガカフェ》
Manga Café © Odile Motelet
かつて電子掲示板2チャンネルを賑わわせテレビドラマとしてもヒットした「電車男」が、オペラになって6月にパリのアテネ劇場で世界初演された。題して《マンガカフェ》。パリのマンガカフェに入り浸るトマはある日メトロの中で男に絡まれていた着物姿のマキコ(仮称)を助ける。どうやってマキコの気を引こうかとネット上でアドバイスを求めるトマ。再び会ったマキコは日本人ではなかったが……。45分の1幕オペラでは3~4分ほどで次々と舞台が変わり、まるでテレビやパソコン画面をザッピングしているかのようだ。マンガカフェの常連はコスプレ姿で(初音ミクもいる!)、トマもドラゴンボールの登場人物の実写版さながら。台本も手がけた作曲家のパスカル・ザヴァロPascal Zavaroは日本に数年間暮らしたことがあり、漫画という社会現象に以前から興味を持っていたという。今年生誕100周年のバーンスタインの1幕オペラ《タヒチの騒動》と組み合わせて上演された。演劇・音楽・ダンス職業評論家協会から与えられる権威ある「新人賞」(音楽部門)を今年受賞した指揮者ジュリアン・マスモンデJulien Masmondetが、自ら率いるアパッシュ・アンサンブルを巧みに指揮して好評を博した(作曲家、指揮者、演出家カトリーヌ・デューン、トマ役のソプラノ、エレオノール・パンクラジーの共同インタビューを、筆者のサイトに掲載している。http://vivace-cantabile.com)。
「競馬を描く」展
Géricault Théodore, Course de chevaux dit Le Derby de 1821 à Epsom, Paris, musée du Louvre, © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Philippe Fuzeau
フランス初の競馬場として現在でも名高いパリ北部シャンティイーで、競馬をテーマにした展覧会Peindre les coursesが開催されている。馬の絵は中世にその表現法が確立されてから数世紀間ほとんど変化がなかったが、18世紀にイギリスから競馬が導入されて人気を得たことや、科学の発展に伴う解剖学的な視点から、馬が勢いよく走る様子をどのように表現するかが大きな論点となった。19世紀には足を前後に広げて宙を駆ける様子が「科学的真実」とされるが、新発明の写真が見せる馬はそれとは全く異なっていた……。そんな馬の絵画史をジェリコーやドガを中心に検証する、興味尽きない展覧会。ジェリコーのデッサン展も同時開催。10月14日まで。http://www.domainedechantilly.com
◇初出=『ふらんす』2018年8月号