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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

ナポレオン没後200年イベント

 ナポレオンの没後200年にあたる今年は、「2021年ナポレオン年」と銘打って各地で様々なイベントが催されている。

 ヴェルサイユ宮殿では9月はじめ、大トリアノンの庭園を舞台に、当時の衣装に身を包んだ400人がナポレオン軍の日常を再現。軍の謁見、歩兵隊や騎兵隊のパレード、野営、大砲発砲、ダンスなどを週末の2日間にわたって披露し、人々の目を楽しませた。独自のCD、DVDレーベル「ヴェルサイユ・スペクタクルVersailles Spectacles」からは、イタリアオペラの愛好家だったナポレオンがお気に入りの二人の歌手を招いてよく歌わせたという『ジュリエッタとロメオ』というオペラの新録音がリリースされている。

 ナポレオン廟で有名なパリのアンヴァリッド(廃兵院・軍事博物館)では、墓や、墓のあるドーム、ナポレオンの遺骸のフランスへの帰還(1840年)をテーマにした絵画6点他を全面的に修復。同博物館ではまた、ナポレオンの死をテーマにした展覧会や、肖像などで伝えられてきたナポレオンのイメージを、約40人の現代アーティストが再創造する展覧会も開催中(2022年2月13日まで)。

 ナポレオンはフォンテーヌブロー城に愛着を抱き、ペルシエやフォンテーヌなど一流の建築家を招いて改装した。ナポレオン下で城がどのように変貌を遂げていったのかを辿る展覧会が2022年1月3日まで開催。また、入念に修復され5月に再オープンした、5000冊を擁するナポレオンの個人図書室は一見に値する。

 コルシカ島のナポレオンの生家では、2022年1月9日まで、ナポレオンが皇帝のイメージを強調するために使用した古代ローマ様式を、ナポレオン史を踏まえて紐解く展覧会が。代々のフランス王の表現様式とは全く異なる古代様式が、どのようにナポレオン神話の構築に貢献したかを探る。

 パリ造幣局では、ナポレオン没後200年記念コイン・メダルを「ナポレオン1世コレクション」として発売中。例えば10ユーロ銀貨(売価12ユーロ)では、ナポレオンの肖像に、ナポレオンを象徴する蜂や鷹、彼が創設したレジオン・ドヌール勲章などをあしらっている。表面に刻まれた「2S」は、アウステルリッツの戦いで歴史的な勝利を得た12月2日を表している。


当時の衣装に身を包んだ、ナポレオン軍の再現
© Pascal Le Mée

◇初出=『ふらんす』2021年11月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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