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「アクチュアリテ 食」関口涼子

乳製品大国でじわじわと広がる植物性ミルク

 プラントベースミルクを見かけることが最近増えた。自然食品店などでは以前から販売されていたが、最近は比較的大衆的なスーパーマーケットでも意外に大きなコーナーが設けられているのが今までにはなかった傾向だ。オーガニックシリアルなどの脇に置かれていることが多く、朝食時に消費しているケースが多いことが想像できる。また、最近フランスの大都市で流行りのコーヒーショップなどでは、ラテに様々なプラントベースミルクを選べることも当たり前になった。日本では豆乳がプラントベースミルクの消費の9割を占めるが、フランスでは今まで人気があったのはアーモンドで、その3分の1を占めている。しかしアーモンドはほとんどが輸入に頼り、その価格も上がりがちなせいで伸び悩んでおり、また、豆乳の消費も下降気味だ。代わって上昇中なのがヘーゼルナッツやオーツ麦のミルクで、ここ数年で2割ほどの消費量の増加を見ている。オーツ麦は価格を比較的抑えられることが消費を伸ばしている一因なのだろう。また、オーツ麦ミルクは、ソースやお菓子など料理に使ったときにも味を損ねないのが好まれる要因になっている。

 統計によると、2003年にはフランス人一人当たりの牛乳消費量は61リットルだったのが、2017年には49リットルに減っている。数年前までは、植物性ミルクは牛乳の3倍の価格だったが、最近その差は縮まり、豆乳やオーツ麦のミルクなどは牛乳の2倍以下で手に入れることができるようになった。

 プラントベースミルクを選ぶ理由は様々で、環境に配慮してのもの、ヴィーガン食を行なっているから、また、免疫機能不全から来る病気などで乳製品の消費を控えなければならない場合もある。また、実際に牛乳と栄養価や成分などにどのような違いがあるかはあまり知らないまま、流行りだからなんとなく、ということで消費している人も少なくないだろう。

 もちろんフランスは今なお乳製品の生産・消費大国であり、プラントベースの市場は、動物由来のミルクを含めたミルクすべての消費額の5%ほどにすぎない。プラントベースミルクの消費が劇的に増えているアメリカなどとは比較にならない量で、量にしても、一家庭が1年に消費するプラントベースミルクはたったの3リットルで、プラントベースのヨーグルトやチーズは1年に1キロに過ぎない。とはいえ、その消費量は年々増える一方で、それに対し牛乳の消費は確実に毎年数パーセントずつ減り続けている。今はまだささやかであっても、数年も経てばプラントベースミルクの市場は無視できないものになることは間違いない。お菓子や料理のレシピ本の書き方が変わったり、レストランのメニューにプラントベースミルクの料理が増えて来る日も近いのかもしれない。

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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