ソブルリエの役割への期待
ここ数年、定期的にフランスにおけるドライジャニュアリー(断酒月間)について報告してきた。12月のパーティー期間からのリセットとして1か月お酒を飲むのを控えようという、アングロサクソン諸国から来たこの習慣は、フランスで急速に広がりつつある。一年のうちひと月だけ断酒して意味があるのかという意見もありそうだが、フランスアルコール学会長の報告によると、ドライジャニュアリーを行った人は、行わなかった人に比べて半年後のアルコール消費が下がっているという。
ドライジャニュアリーのウェブサイト(https://dryjanuary.fr/outils/)では、登録すると断酒を成功させるためのコツを提案するニュースレターが届くほか、他の参加者たちの証言などを読むこともできる。断酒によるお金やカロリーの節約が計算できるアプリ「トライドライ」は、英国では2013年から存在していたが、フランス語版も3年前に現れた。
この背景には、決して楽観できない現実がある。フランス健康庁の統計によれば、フランス人のアルコール消費は毎年下がりつつあるものの、消費量は未だOECDの中で6位であり、アルコールが原因での死亡は毎年4万9千人に上る。フランス人の18歳から75歳の23.7%は、推薦され得る限度量(男性は1日3杯、女性は2杯)をうわまわるアルコール量を消費している。
ソブルリエ(アルコール飲料以外のペアリングに力を入れるソムリエ)の先駆者として知られるブノワ・ドノフリオは、ノンアルコールの習慣自体を楽しもうというマニフェストを「タイムアウト」誌に掲載した。アルコールを断つことは苦しい義務でもアルコールを飲む人を排除するものではなく、逆に、人が集まる場で何かとアルコール消費が強要される傾向から人々を解放し、料理に合わせた飲料のバラエティを増やすことにつながると言う。そしてそのためには、ノンアルコールのチョイスが単に甘いソーダに限られてはならず、多くのソムリエやシェフ、ワイン生産者の協力を得て、これからノンアルコールの世界をもっと豊かにしていこうと呼びかける。
ドノフリオは1月にノンアルコールペアリングのディナーをシェフのジョアン・バリシャッスと企画した。彼は、アルコールがないとディナーは楽しくならないという社会のイメージを変えたいとし、「クリエイティブで個性的なペアリングは可能なのです」と言う。もう一人の企画者のマルセイユのワインセラー経営者、ウージェニ・フリッポは近年のノンアルコールの傾向がスノビズムに終わることを危惧している。「手作りで、糖分が高くなく、美味しく、体に良く、値段が高くないノンアルコール商品はまだ多くありません。」そのためにも、ノンアルコールカクテルの提供や料理とノンアルコールを提案できるソブルリエという新しい職業がこれから重要になっていくのではと語っている。