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「アクチュアリテ 食」関口涼子

外出禁止下で注目を集めるレシピ色々

 今回はこの春、食とメディアに起こった動きを紹介したい。人々の外出が止まり定期刊行物は不調かと思われたが、料理雑誌の売上げは81パーセント増と大健闘。テレビの視聴率も全体的に伸びたが、中でも料理バトル番組「トップシェフ」は視聴者数が2倍に跳ね上がった。スターシェフのシリル・リニャックは生放送で料理を行い、200万人の視聴者を釘付けに。この秋からは、フランス全土のアマチュア料理家にお菓子を作ってもらう番組を始めるという。フランスで最大規模の料理レシピサイト「マルミトン」も検索数が倍に。ミシュランは、テイクアウトのできるレストランリストを発表した。

 インスタグラムではライヴやレシピの投稿花盛りだったが、その中でもコロンビア出身のシェフ、ジュアン・アルベレズは、ユーモアに満ちたレシピビデオの配信で、フォロアーを11万から20万人へと増やした。三ツ星シェフのアラン・パッサールは家庭でも作れるレシピを紹介。季節の野菜を使った、3、4つの材料でできるレシピはヒントに満ち、パッサールファンを喜ばせた(筆者もいくつも試したがどれも美味)。シチリア由来の古代小麦と132年引き継がれるパン種(!)で、パスタのように美味しいパンを作るアドリアーノ・ファラーノは、自身のアカウントで#bruschettachallenge(ブルスケッタはイタリアのオープンサンドに当たるもの)をつけて美味しいレシピを募ると、彼のパンのファンがそれに応えて個性的なブルスケッタを次々投稿した。


ブリュノ・ヴェルジュ氏の投稿 #bruschettachallenge

 日刊紙「リベラシオン」の子ども版、「ルプチリベ」は、子どもでもできるレシピをイラスト入りで紹介し、「フーディング」誌のジャーナリスト、アイトール・アルフォンソは、文学作品中の料理シーンを選び、イラストレーターの挿画やシェフのレシピ付きで紹介するシリーズをソーシャルメディア上で展開した。

 日本でも、多くの料理人や料理研究家が「料理リレー」に参加し、家庭で簡単に手に入る食材で使いやすいレシピを紹介していたが、数か月経ってみて、レシピにも料理人の人柄が出るし、専門家のテクニックをどれだけ一般向けのレシピに落とし込めるかに、各シェフの教育者としての素質が見てとれる。コロナが収束しても試せる魅力的なレシピを紹介しているシェフも多いので、自分の好きなシェフのページを覗いてみてはいかがだろうか。

◇初出=『ふらんす』2020年7月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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