新たな一面が光るギリシャ料理の魅力
豆料理も多くヘルシーなイメージのギリシャ料理
ギリシャはフランス人が夏のヴァカンス地として好む地であり、毎年150万のフランス人旅行客が訪れている。その割には、外食産業におけるギリシャ料理はずっと変わり映えせず、ギリシャ惣菜屋ではチーズ、オリーブ、サラダやムサカや揚げ物、イカの詰め物などがどこに行っても同じように並んでいるのが常だった。
そのイメージがこの十数年で変わりつつある。若い人たちの集まる18区に店を構え、ビストロ1軒、ワインバー1軒を展開するEtsi(エッツィ)ではギリシャ出身の若い女性シェフが手掛けるハーブや野菜を組み合わせた新鮮な料理が食べられるし、ギリシャ版ナチュールワインバーのようなTaverna(タヴェルナ)、カクテルなども出すGrand café d’Athènes(グラン・カフェ・ダテヌ)は、レストランに居る雰囲気は味わえながらも、夜でもピタのようにお腹がいっぱいになる品々を用意しているので、若者の顧客で賑わっている。このインフレの中、比較的手が届きやすい価格でありながら内装はモダンで、かつ料理としてはレバノン料理やイスラエル料理などと同様に昨今人気の地中海小皿料理と文化的に重なるということで、遅ればせながら市場に参入してきたのだろう。
この数年出版されたレシピ本は、以前と異なるコンテンポラリーな装丁で、ギリシャ料理のイメージを一新するものが多い。地中海料理のヘルシーなイメージは保ちながら、厳選された素材を強調し、全体的にガストロノミーへと料理の底上げを図っている。イタリアと比べると大衆的なイメージがあったオリーブオイルも、カラマタ産オリーブオイルの生産販売で有名になったProfil Grec(プロフィル・グレック)のように、ギリシャ料理レストラン以外のシェフも使う高品質のものが出てきた。
この2月には、パリの中心地に近い2区に、レストラン兼食材店のYpseli(イプセリ)がオープンした。アパレルショップだったという広い面積に100席以上が並ぶ。5メートルの高さの天井と現代的な内装は、今までのギリシャ料理店のイメージを様変わりさせている。これは、アテネで最近流行っている「ガストロタベルナ」という、素材と季節感、地産地消を重視しながらも、伝統料理だけにこだわるのではなく、オリジナルな料理を提供する店に倣っているのだという。ギリシャ本国での料理の変化を反映する店が増え、今まで知らなかったギリシャ料理の新たな一面が紹介されるようになるのは楽しみだ。