2017年8月号 フランス発! 難民が主役の食のイベント
フランス発! 難民が主役の食のイベント
難民réfugié, migrant を巡る報道には明るいものは少ないが、料理を通じて彼らの状況を少しずつ変えていこうという試みが、とくにフランスで広まりつつある。
去年、パリで始まったRefugee Food Festival(難民フード・フェスティバル)というイべントでは、インド、スリランカ、コートジボワール、シリア、イランなどから亡命してきた料理人たちが、会期中11 軒のレストランで料理を提供した。今年は国連難民高等弁務官事務所の支援を得て、6 月15 日から30 日まで、ヨーロッパの13 都市で50 のレストランが難民の料理人に門戸を開いた。この試みを自分たちの街で企画するためのマニュアルも出来ている。
Le RECHO──refuge(難民)、chaleur(心の温かさ)、optimisme(楽観主義)の略──は、10 人の女性(うち3 人がシェフ)によって設立されたアソシエーションだ。フランスだけではなく、ベルギー、ドイツ、英国の難民キャンプを回り、1 日に500 食のベジタリアン料理を提供し、現地のボランティアたちと、難民を対象にした料理教室や料理の職業訓練を提供している。
Les Cuistots migrateurs(飛び回る料理人)は、去年パリで立ち上げられたソーシャルビジネスで、難民に就職の機会を与えることを目的としている。イラン、シリア、チェチェンなどから来たスタッフが調理する、フランス人にとってはエキゾチックな料理を比較的安価に(一人前10 ~ 30 ユーロ)ケータリングするサービスを1 年前から提供している。
こういったイニシアティヴにはいくつものメリットがある。難民たちが、他者からの保護に頼るだけの人々ではなく、かつては、手に職を持ち自立した生活を営んでいたのだというあたりまえの事実を理解できること。土地の料理を食べることで、文化の一端を具体的に「味わう」こと。土地を離れることで失われてしまいがちな、固有の文化を保持すること。そして彼らに職と尊厳を与えることなどだ。料理を通じて、難民たちとの関係、彼らの生活を変えようとする運動が、様々な意味での「食の大国」フランスで広まっているのは納得がいく。これからどのようにこの思想が広がっていくのか楽しみだ。
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Refugee Food Festival のマニュアル
http://www.gitbook.com/book/refugeefood-festival/kit-refugee-food-festival/details
Le RECHO
Les Cuistots migrateurs
http://lescuistotsmigrateurs.com/
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◇初出=『ふらんす』2017年8月号