禁酒月間〈ドライジャニュアリー〉
ドライ・ジャニュアリーで注目される、各種ノンアルコール
ワイン大国のフランスで断酒が流行、というと不思議に聞こえるかもしれない。しかし、イギリス発祥のドライジャニュアリーDry January(1月の1か月断酒するという運動)は確実に定着しつつある。68%のフランス人が、ドライジャニュアリーは良い習慣だと考えており、今年は24%(18~25歳は35%)のフランス人がドライジャニュアリーにトライすると答えた。このうちどのくらいが目標に達成したのかはわからないが、筆者の周りでも、去年までは、アルコールに問題のある人か真面目でつまらない人がドライジャニュアリーを実践するくらいに思われていたのが、今年は特に若い世代を中心に、1月はノンアルがかっこいいという雰囲気が出来上がっていた。
ファッションと文化雑誌『MINT』の編集長、デボラ・ファムはこのひと月アルコールを絶った経験を書き、30歳を過ぎたら自分の生活が体や顔に出るのだから、気をつけなければと思ったと語る。また、お酒を飲まなかった1か月を経て、周囲にただ流されて飲むのではなく、自分が本当に飲みたいと思った時だけゆっくり嗜むのが自分に合っていると分かったという。
また、近年現れているケースに、「ソブルリエsobrelier」たちがいる。ソムリエsommelierとソブリエテsobriété(素面)をかけた造語であるこの用語は、ソムリエでありながらお酒を飲まない人たちを指す。飲食業界に内在するアルコール摂取過多の問題に近い場所にいる人たちならではの意識改革だ。
数か月前には、パリでは初めてノンアルコールドリンク専門のセラーがオープンした。オーガニックかつ地産地消、無加糖の商品を250種類取り揃えている。ノンアルコールビール、ワイン、リカーなどの他に、ジンジャービール、コンブチャ、シトロナード、ハーブティーなど、アペリティフや食事のお供になる大人のためのソフトドリンクを購入することができる。
2月初頭に開かれたカクテルサロンの今年の7つの傾向の中にもノンアルコールの台頭が挙げられていたが、このサロンでセレクトされた製品の中には、ノンアルコールでウルトラローカルという、2つの新傾向を満たしたVerjusがあった。未熟葡萄を絞った、酸味のある葡萄汁は、通常は調味料として使われる事があっても、直接飲むことはないが、この製品は飲み心地も爽やかだ。葡萄栽培農家が作るノンアルコールドリンクというのが、ワインの伝統に沿っていながらも新しい傾向だといえる。
今年のドライジャニュアリーの盛り上がりの一つにはこの、ノンアルコール商品の充実があるだろう。今までは甘い飲料か、アルコールの真似をした飲み物しかなかったが、最近ではレストランでもコンブチャやクラフトエール、ノンアルビールくらいは普通に揃えているようになったし、ノンアルドリンクが充実したレストランを紹介する記事も増えている。
◇初出=『ふらんす』2023年4月号