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「アクチュアリテ 食」関口涼子

営業停止下の飲食業者はどう対応したか?

 この記事が掲載される頃状況がどう変化しているかはわからないが、新型コロナウイルスの感染者が激増したことを踏まえ、フランス政府は3月14日、生活必需品を扱う食料品店や薬局以外の営業停止を命じた。さらに16日には外出制限令が出され、多くの企業はもちろんだが、生鮮食品を扱う外食産業は突然の状況に対応せざるをえなくなった。

 アルザス地方のレストラン「オーベルジュ・オー・ブフAuberge au Boeuf」4代目シェフのヤニック・ジェルマンが、自分たちの店が閉店を余儀なくされたのは第二次世界大戦以来だと語るこのような状況の中、営業停止命令の出た4時間後には店を閉める必要がある外食産業は食材のストックを抱え右往左往することになった。翌日、多くのレストランが、野菜や肉など保存のきかない食品をスタッフや友人に配ったり、店頭で原価で譲ったり、福祉団体などに寄付していた。フードロスのために食材ストックを受け入れる団体を取りまとめるネットワークもすぐに立ち上がった。

 外食産業に商品を卸している生産者も当然危機に立たされることになったが、彼らの中には、営業許可を得た日用食料品店と急遽提携し、自分たちの野菜や海産物などを届けられるようにしたところがある。消費者と直接契約を交わし、宅配を始めた生産者もいる。シェフたちの中にはケータリングシステムを始めるところがあり、そういったレストランや生産者たちのリストがまとめて見られるサイトも作られた。

 また、ホームレスや難民の人たちに食料を配給するアソシエーションなども、一部ではあるが、配給の方法を変えながら活動を続けようとしている。

 家にも戻ることができず仕事を続けている人もいる医療従事者を応援しようと、彼らに食べ物を贈るパティシエやショコラ職人も現れた。もちろん、そのような商品を配達したりレジ打ちをしたりするスタッフが低賃金で最も危険にさらされる立場にあるという問題などは残っているものの、厳戒態勢が敷かれてから三日でこの反応は驚くべきだ。


救急隊員にお菓子を差し入れするパティシエのニコラ・パシエロ(左)

 毎日状況が変わり、誰にとっても困難な状況の中、食の業界は今までになかった連帯を見つけようと、驚くほどのフットワークの軽さで行動を始めたように思われる。これが、事態が収束した後の食業界にも新たな価値観を生み出してくれることを心から望みたい。

◇初出=『ふらんす』2020年5月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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