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「アクチュアリテ 食」関口涼子

モンプリエの現代美術館で開催 「Cookbook」料理とアートの展覧会

 この欄では今までにも料理をテーマにした展覧会について書いたが、今月はモンプリエの現代美術館で5月12日まで行われている「Cookbook」を紹介したい。これは、2013年にパリのボザール美術館で開かれた展覧会シリーズの続きで、アンドレア・ペトリーニとニコラ・ブリオーのキュレーターコンビによる企画。前回同様、25人のシェフと20人のアーティストを招待し、その中の何人かにはコラボレーションで作品を構成してもらうことで、アートにおける食のテーマや食用可能な素材の問題、そして料理におけるアーティスティックな要素について考察する機会を作るというものだ。

 前回はピエール・ガニエールやアラン・パッサールなど、美術に深い理解があるガストロノミ界の権威であるシェフのデッサンなどを展示していたが、今回は趣 きを変え、コンテンポラリーアート界にも関わりのあるイナキ・エズピタルトなど、50歳以下の若いシェフを選んでいる。一方アーティストの方も、前回のダニエル・スポエッリやソフィ・カルなど、ディナーや食事という場の共有をテーマにしていた重鎮作家より、直裁に食材を素材として作品を作ったり、インスタレーションやパフォーマンスをする作家が増えており、この5年間の間に、料理とアートが一層近しくなっていることを思わせる。また、より自然に近い料理、環境や風景と調和する料理、発酵や植物による発色などオーガニックなプロセスへの関心、温度や湿度を変えることによる素材の変化、そして、インスタグラムなどでの料理写真への反動としての不可視なものへの興味など、アートともクロスするテーマが増えていることも、展覧会の内容の深化につながったと言える。

 MO.CO. と呼ばれるモンプリエの現代美術館は3館あり、新しい試みを行うラボとしての美術館(今回の展覧会はここで開かれている)、展示スペースを持つ美術大学、そして今年6月に開館する、自らはコレクションを持たず他からの「コレクション展」で成り立つ、アートにおけるコレクションの概念について問う美術館、から成り立っている。

 今年注目のアートスポットの一つだ。

« Cookbook '19 » 展
Montpellier Contemporain MO.CO.


展覧会カタログもpresse du réel より一般販売されている

◇初出=『ふらんす』2019年5月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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