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「アクチュアリテ 食」関口涼子

ワインに恋した女たち

 女性シェフを扱った映画とその書籍化を以前この欄で取り上げたが、それに続く動きをご紹介したい。今秋に刊行されたVigneronnes(女性ワイン生産者)という本だ。フランス各地を回り、100人の女性の作り手にインタビューをしたジャーナリスト、サンドリーヌ・ゲイヴァエールが執筆している。彼女は自らも「Women do wine」というアソシエーションを組織し、ワイン業界での女性の地位向上に努めている。本著もその活動の一環だと言えるだろう。

 本書に出てくる最も若い作り手は25歳、最年長は73歳と年代は幅広いが、多くは30代から40代。一番の古株は1978年以来ワイン造りを続けているが、多くはこの10年ほどでワイン造りの世界に入ってきた人たちだ。オーガニックやビオディナミ製法が多いのも特筆すべき部分だ。

 本書のインタビューを読んでいて感じるのは、彼女たちの前の世代にも、女性たちは常にワインを作り続けてきたということ。多くは男性の影に隠れていたが、ワインを愛し、葡萄畑で黙々と働き、時に味の向上に貢献した数知れない女性たちが、現在、自分がワイン造りをしていると胸を張って言える女性たちを作り出しているのだ。

 同月に出たのはカトリーヌ・ベルナールのMa part des anges(わたしの天使の取り分=酒類が、熟成過程で蒸発する分を指す表現)(Les Ateliers d’Argol 社)。彼女はリベラシオン紙のジャーナリストの職をなげうって10年以上前にワイン造りを始め、オーガニックワイン作りを続けながら、レシピ本などを執筆している。前職の技能を生かしつつ、畑に毎日立つ者の視点で書かれた本は、ワインを造るということの具体的な作業とともに、「天使=自然」の働きに任せるスピリチュアルな部分を余すところなく描き出している。

 日本でも、日本酒の世界で活躍する女性を追った映画『カンパイ! 日本酒に恋した女たち』が封切られたばかりだし、日本ワインの作り手の3分の1は女性だという。もしかしたら気が付かずに、女性が作ったワインをすでにフランスで口にしている人もいるかもしれない。「ワインに恋した女たち」の物語を知ることで、一層その味に深みが増すことだろう。

◇初出=『ふらんす』2019年12月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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