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「アクチュアリテ 食」関口涼子

ブーム到来! シードル最新事情

 クラフトビールやカクテル、日本酒など、アルコール飲料の多様化が進むフランスだが、ここ数年シードルの存在感も高まっている。シードル生産地のブルターニュで3年前シードル専門バーができたのを皮切りに、パリでも、若者向けのカフェが集まるサンマルタン運河沿いの通りに「Cidrerie」、シードル屋さんという名のシードルバーが開店。「モダンクレープ屋」を謳う「ブルテュス」は25種類のレフェランスを提供。そば粉のクレープを提供する「ブレッツ・カフェ」は昨年モントルグイユ通りのレストランに併設してシードルバーをオープンした。ここでは70数種類のシードルが並び、シードルベースのカクテルも楽しめる。レストランでもガレットと一緒にシードルを頼めるのだが、このバーでは、おつまみとともに一杯飲むことも、ヴィンテージシードルを購入することもできる。

 今までのイメージを一新するシードルを提案する生産者も多い。シードルに使用されているリンゴはなんと千種以上。リンゴの品種を生かし多様なニュアンスのシードルを作るところも。皮近くの渋みがアクセントになるもの、甘さの中にも微かなビターテイストを残したもの、爽やかな酸味できりりとまとめたシードルなどが出始めている。多くは複数種のリンゴをミックスして作られるが、「ブルターニュのシードル」の異名をとるGuillevic のように、ただ一種類から製造されるシードルもある。また数は少ないが、オーガニック認定された生産者も出てきた。

 アルコール分が低く様々なシチュエーションで使いやすいのがこのブームの理由の一つだろう。レストランで働くソムリエの知り合いは、軽くて疲れないから仕事の後に飲むのだと教えてくれた。ロゼシードル、飲みやすいミニボトルサイズなど、様々なシーンに合ったシードルも現れている。有名シェフ、ティエリー・マルクスは、寿司の酸味にはシードルがぴったりだと勧めている(!)。

 このブームはフランスだけではない。アメリカやオーストラリアでも売り上げは急上昇、ハイネケンのような大企業もシードル販売に力を入れている。シードルで知られたブルターニュやノルマンディだけではなく、バスク地方、イギリス、スペイン、イタリアのシードルを扱う店も増えている。

 日本でも最近国産シードルが注目され始め、ここ5年間で日本のシードル市場は2.5倍に伸びた。青森や岩手に新しい生産者ができるほか、ワイン醸造所もシードル作りに参入、東京・神田にはシードル専門バーができている。日本のシードルがパリで飲めるようになる日も来るのかもしれない。

◇初出=『ふらんす』2020年1月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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