音楽祭にもガストロノミを!
初夏を迎えたフランスは様々なイベントで賑わう。去年のこの季節は、美食レストランの料理を廉価に味わえるイベント「パリの味」を紹介したが、今年は、ヴァンセンヌの森で毎年6月に行われる野外音楽フェスティバル「We Love Green」を紹介したい。食文化のコーナーでなぜ音楽フェスを、と思われるかもしれないが、7年前から開催され、週末2日で6万人の集客力を誇り、今年はビョークのコンサートなども行われたこの大規模なイベントは、2年前からフード部門にも力を入れ好評を博しているのだ。
パリの有名レストランも出店している55軒のフードブースは、5~12ユーロで軽食が楽しめる。ストリートフードが大半を占めていることには間違いないが、ハンバーガーにしても、パスタにしても、それなりに料理のレベルが高いのは、今までの音楽フェスにはなかったことだ。西欧料理だけではなく、小籠包、エンパナーダ、インド料理からレバノン料理、手打ちそばまであるのだから驚きだ。100軒以上の出店希望の中から、3つ星レストラン「アストランス」のシェフ、パスカル・バルボを審査員長としてセレクションした結果、このような多様性が生まれたのだという。
また、ベジタリアン、ヴィーガン料理、オーガニック素材を謳ったブースも多く、地産地消、サステナブル、原料の産地表記なども出店の条件となっている。
「We Love Green」のスローガンは隅々まで徹底していて、食器はすべてエコ容器を使用、いたるところにゴミ箱があり、コンポスト可能なゴミ、タバコの吸殻、リサイクルゴミなどに細かく分け捨てられるようになっている。環境に優しい態度を貫くフェスティバルだと明確に打ち出しているのだ。
この音楽フェスの食ブースを担当しているのは、オリジナルな食の企画を実現することで知られているエージェンシー「broken eggs」。若いスタッフのエネルギーが感じられる。
音楽フェスというと、ビールにホットドッグといったイメージが強いが、若い観客も多いこういったフェスティバルで、環境に配慮しながら、それでいて祝祭感覚の楽しい食事ができるのは、様々な意味で希望が持てる傾向のように思われる。
食器はすべてエコ容器を使用し、環境にも優しい
◇初出=『ふらんす』2018年8月号