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「アクチュアリテ 食」関口涼子

おでん屋からどら焼き屋まで!? パリの和食事情

 海外での和食ブームは今に始まった事ではない。オペラ座近くには日本食が立ち並ぶ地区があったし、かなり前からスーパーにもお寿司のパックが並ぶようになっていた。しかし、近年のパリにおける外食の和食ブームには目をみはるものがある。それなりに美味しい和食を挙げるだけで、ゆうに100軒は超えるだろう。

 近年の傾向として、店の専門化が見られる。蕎麦屋、うどん屋、うなぎ屋、おでん屋、串揚げ屋ぐらいならまだ分かるが、最近はどら焼き屋、おにぎり屋、おいなり屋、自家製の豆腐料理屋、唐揚げ専門店、食パン専門店さえある。また、「昭和の喫茶店」をコンセプトにパフェを供する店まであるのにはさすがに驚く。


本格的な手打ち蕎麦が味わえるAbri soba

 今まで和食のレストランは高い、というイメージがあったが、ストリートフードの台頭によってすそ野が広くなったのも最近の傾向だろう。たこ焼き屋、お好み焼き屋だけではない。お惣菜の具もあるたい焼き屋は日本人地区ではなく中華街の13区に開店した。お菓子も飲み物も抹茶オンパレードのカフェはパリジェンヌで賑わっているし、マレ地区にある、内装まで原宿風のクレープ屋は日本好きの10代フランス人のたまり場だ。

 「bento」は欧米全体の流行りだが、弁当定食を出す店だけではなく、帰宅前にテイクアウトをしたり、オフィスにお弁当を出前するなど、中食的な使い方がされることも増えてきている。

 それとは反対に、本物を求めている人たちのための店も出来てきた。「ギンザオノデラ」「JIN」「Sushi-B」など、寿司屋でありながら、星付きの店では、昼から1万円ほどすることもあるが、それでも食べに来る価値があると考えるフランス人の客が増えたのだろう。それに、今ではゆうに30軒以上はあるだろう日本人シェフのフランス料理レストランを加えたら、パリで日本関係の外食産業にぶつからない方が難しいくらいだ。

 これら和食の多様化は和食理解の深化を表すと同時に、「フランス人は和食が好きだから商売になる」と見込んでビジネスを展開する日本人、フランス人が増えていることの象徴でもあるのだろう。

 いずれにしても、和食がこんな風に広まっていくのは見ていて嬉しい。パリっ子たちは、肩肘はらず、自分たちのやり方で「和食を楽しみ、和食で遊ぶ」ことを始めたのだと思う。

◇初出=『ふらんす』2018年6月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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