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「アクチュアリテ 食」関口涼子

加速するアルコール離れ

 イギリス由来の「ドライジャニュアリー」(毎年1月に1ヶ月間断酒すること)は市民権を獲得しつつある。この誌面でも数年前から毎年フランスでの傾向を追っているが、アルコール離れは加速する一方だ。毎日飲酒する人はこの30年で3分の1にまで減少し、飲酒しない週もあると申告したフランス人は2000年の37%から61%まで増加した。
 これまではノンアルドリンクの見本市や専門店、女性が断酒体験を書いた本、ドライジャニュアリーを勧める団体などについて紹介してきた。では、スーパーマーケットのような量販店ではどうなのだろうか。
 「カルフール」では数種類のビール、ワイン(白、ロゼ、スパークリング、ピーチや木苺などのアロマ入り)が手に入る。アルコール飲料チェーン店の「ニコラ」では、ワインやジン、ラム、ウィスキーに加え、ハーブベースの発酵飲料という品揃え。「モノプリ」でも、ワイン、ビール、スプリッツ、モヒートが販売されている。いずれもノンアルコールである。
 ビールの価格は、アルコールの有無に関わらずたいして変わらない。ワインはスーパーなどだと10ユーロ以下のことが多いが、ニコラではノンアルだと13〜16ユーロと高めの価格設定で、ノンアルジン、ラムなどは25〜30ユーロといったところ。決してお得な値段ではないが、アルコールの代わりを探す消費者の弱みをついているとも言える。
 量販店の特徴として、大手メーカーが自社製品のノンアルバージョンを販売していることがある。ビールでいえばハイネケン、コロナ、1664、ペローニ、レフ、カクテルではマティーニ、スプリッツ。ワインではそういった商品は少ないが、それは、ワインがワールドワイドに大量生産するものではないからなのだろう。レストランやノンアルドリンク専門店が、ノンアルクラフトビールや小生産の自然発酵飲料など、希少価値、健康志向を前面に押し出すのに対し、量販店では、メジャーなメーカーが、人気商品と類似の味を目指してみましたという安心感と信頼を売りにして商品提供を行なっていることが伺える。
 「ニコラ」の店員の話だと、家に人を招く際、お酒を飲まない友人に配慮して買う人、またその逆で、お酒を飲めない人が、自分でも飲めるものを持参するために買うケースも多いという。また、ワインセラーなどで扱っているちょっと珍しいノンアルワインなどは、話の種にとプレゼント用に買って行く人もいるらしい。
 ドライジャニュアリーの時期以外にもアルコールを控える人が増えてきている現状を反映していると言えるだろう。昼間からしっかり肉料理を食べて赤ワインの一杯でも飲むフランス人、は過去のものになりつつあるのだろうか。

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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