近づく子供とレストランの距離
「西欧では、子供をベビーシッターに任せて夜は大人で楽しむ」というイメージをわたしたちは一般的に持っているが、実際のところはどうなのだろうか。
アメリカで見られるような「キッズフリー」「アダルトオンリー」を打ち出すレストランはフランスでは比較的少ない(ル・ヌーヴェル・オプス紙の今年5月28日の記事によると、国立ホテル協会は「ざっと見て3%ほど」と見ているとのこと)ものの、ヨーロッパの他の国で広がっているこの傾向はフランスにも現れつつあるといい、これが定着することがあってはならないと児童問題担当高等弁務官のサラ・エルハイリは警笛を鳴らす。
この数年は、結婚式に子供が参加することを望まないカップルも増えているという。結婚する世代の多くは友人にも小さな子供がいる場合が多いが、「子供と一緒に来るくらいだったら来てもらわなくても構わない」と証言するカップルの例が最近のル・モンド紙でも紹介された。特別な機会に子供に騒がれたくない、ガーデンパーティーなど戸外で食事をする場合などは、走り回って怪我でもされたときの責任を取れない、また子供の分も加えると経済的に負担が大きいと考えることなどがその理由であるようだ。
しかし、その傾向とは逆の動きも現れている。
レストランのガイドサイトで、年に一度紙のガイドブックの出版も行っている「ル・フーディング」は、かつてはパリを中心にしたレストランを多く扱っていたが、最近は地方やベルギーのレストランまで範囲を広げるとともにコロナ後はレストランだけだはなくパン屋やチーズ屋、ワインセラーなどのガイドも行う。様々な新傾向にも敏感な媒体だが、そのサイトに去年から「キッズ」の項目ができている。ビストロやアジア系レストランなど気兼ねなく訪れられる場所だけではなく、星付きのレストランで、自らキッズフレンドリーを謳っている場所なども紹介されている。その中には、単に子供OKなだけではなく、子供用のメニューを提供しているレストランなどもあり、これまではいわゆるチェーン店のファミリーレストランなどに行くしかチョイスがなかった子供を持つカップルにとっては、貴重な情報だろう。また、レストランのシェフが提供する、子供も大好きなレシピのオリジナルバージョン、例えばベルギー風ボロネーゼスパゲッティやかぼちゃのゴーフルに洋梨のローストをあえたもの、フィリピン風チキンにバナナケチャップを添えたものなどがあり、20年以上続くこのレストランガイドが、こういった記事によって若い子どものいる世代の関心を集め、若返りを図っていることがうかがえる。
子供の参加が敬遠される場所や機会が増える一方、子供によりよい食育の環境を提供したいと考える場所もでてきている。多様なチョイスが明確に現れることで、自分たちにふさわしい場所を選びやすいという意味では現在の傾向は好ましいものなのかもしれない。