今フランスで人気の日本の小説は?
FNACの人気ランキングのコーナー。20年前はこんな風に日本の作品がずらりと並ぶ日が来るとは想像できなかった。
先日、近所のFNACの書籍売り場をぶらぶらしていたときのこと。外国文学の人気ランキングのコーナーがあり、なんと2位から5位まで日本人作家の小説が並んでいて、うれしい驚きに思わず写真を撮ってしまいました。ちなみに1位は、イギリス人作家Anna StuartのLa Sage-femme d’Auschwitzでした。2022年10月号の『ふらんす』にて、日本の現代小説がフランスで多く読まれるようになっており、特にRomans feel-goodと呼ばれる癒し系ジャンルが人気と書きましたが、あれから3年が経った今も、その傾向は続いている、というより、ますます強くなっているかもしれません。ランキングはこちら。
2位:Tant que le café est encore chaud 『コーヒーが冷めないうちに』 川口俊和 著
3位:Le Gardien des souvenirs 『人生写真館の奇跡』 柊サナカ 著
4位:Le Goûter du lion 『ライオンのおやつ』 小川糸 著
5位:Au revoir les chats ! 『みとりねこ』 有川ひろ 著
この5冊を囲うように、他の作品も置かれていて、八木沢里志の『森崎書店の日々La Librairie Morisaki』、原田ひ香の『図書館のお夜食La Bibliothèque des auteurs disparus』、上田健次の『銀座「四宝堂」文房具店La Papeterie de Ginza』、青山美智子の『月曜日の抹茶カフェUn lundi parfum Matcha』、『リカバリー・カバヒコRencontres au parc Hinode』など、少しファンタジックな要素があり、読んだ後に心が温まるような内容の小説が主流です。そんな中で、貴志祐介の『悪の教典La Leçon de mal』と『黒い家La Maison noire』が異彩を放っていました。
こうした日本語の人気小説の表紙を見ていると、ひとつ共通点があることが分かります。それは、猫! ストーリーに関係なく、なぜか猫が描かれていることが多いのです。かつての日本文学の表紙は、浮世絵や芸者風な女性の写真などが多かったのですが、今はもっぱら、心地よさそうな雰囲気のカフェやリビングがほっこりとしたタッチで描かれ、そこに猫がちょこんと座っているイラストが「売れる表紙」としてパターン化している印象です。『リカバリー・カバヒコ』の表紙にも、ジャングルジムに黒猫が座っている絵があしらわれていて、カバの遊具が主役だと知らずに読んだ人は、きっと面食らうだろうなぁと思いました。