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「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

オリンピック・マスコットの元祖はフランス生まれのシュス!

 オリンピックを楽しく彩るマスコットは、広告やポスターに登場したり、ぬいぐるみやTシャツ、キーホルダー、マグカップ、文房具など、ありとあらゆるグッズにあしらわれたりする、各大会の顔のような存在。モスクワ大会のこぐまのミーシャや、ロス大会のイーグルサムなど、アニメが作られるほどの人気を誇ったマスコットたちもいましたね。
 公式マスコット第1号は1972年のミュンヘンオリンピックの際に作られた、バルディという名のダックスフントですが、実はその4年前、1968年にフランス南東部に位置するグルノーブルで開催された冬季オリンピックで、元祖とも呼べるキャラクターが誕生していました。名前はShuss le skieur(スキーヤー、シュス)。真ん丸の赤い顔に白い帽子をかぶり、稲妻のような白いラインが入った青のスキーウェアを着て、青いスキー板の上に乗っているトリコロールカラーのマスコットです。デザインはアニメ映画作家のアリーヌ・ラファルグが手がけました。
 非公式のマスコットとはいえ、なんとも言えない可愛らしさに多くの人が魅了され、アリーヌが書いた脚本でアニメ映画が制作されたり、キーホルダーやピンバッジ、コップ、ボールペン、ステッカー、時計、スノードーム、絵皿といったたくさんのグッズが販売されたりと、その後のオリンピックでマスコットが作られるきっかけとなった大人気のキャラクターでした。今でも、それらのグッズは貴重なヴィンテージ品としてコレクターたちに愛され続けています。さらには、老舗フランス菓子店のルノートルがシュス人気にあやかって作ったシュス・オ・フリュイという定番ケーキがあることからも、当時のフィーバーぶりが窺えます。アーモンドプードルを使ったビスキュイにフロマージュブランと生クリームのムースを重ね、ホイップクリームと赤い果実で飾ったケーキは、シュスの赤い顔と白い帽子を思わせます。今年はイチゴのシュスが6月25日まで期間限定で販売されていました。
 今年のパリ五輪では、フリジア帽をモチーフにしたオリンピック・フリージュとパラリンピック・フリージュが大活躍しています。義足をつけたキャラクターは今大会がおそらく初で、そんなところからも、フランスが常に革新的なアイデアを生み続ける国だと実感させられます。オリンピック公式サイトにある歴代マスコットの紹介ページを、チェックしてみてください。

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著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

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