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「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

フランスの春の訪れはチョコレートとともに

 コートが手放せない肌寒い日がまだ続いていますが、それでも少しずつ春の足音が近づいてきました。フランス人にとって、春の訪れを感じさせる風物詩のひとつと言えば、「復活祭Pâques」を祝うチョコレートでしょう。3月になると、卵やヒヨコ、ニワトリ、ウサギのほか、魚、鐘など、豊穣と繁栄のシンボルである伝統的なモチーフをかたどったチョコレートがたくさん売り出され、パン屋さんやパティスリーのショーウィンドウ、スーパーの売場をにぎやかに飾ります。フランスではバレンタインデーよりも、この復活祭のシーズンの方がチョコレートの消費量が格段に多いのです。


ぎっしりと陳列された復活祭のチョコレート

 復活祭は十字架にかけられたイエス・キリストが3日目に復活したことを記念する大事な祭日で、その翌日の月曜日も祝日になります。「春分の日が過ぎてから最初の満月の次の日曜日」と定められている移動祝祭日で、今年は4月4日と5日が祝日になります。子どもたちにとっての一番の楽しみは、「卵狩りchasse aux oeufs」と呼ばれるチョコレート探し。家の中や庭のいたるところに、大人たちがこっそり隠しておいたチョコレートを、子どもたちが夢中になって探し回ります。復活祭の日曜日には、家族や友人が集まって過ごすのが恒例ですが、今年もそんな風に楽しい祝日を迎えられることを願わずにはいられません。

 3月の最終日曜日には、時計の針を1時間進め、冬時間から夏時間へと移行します。長らく実施されてきたこの習慣ですが、欧州議会が廃止案を賛成多数で可決し、2021年以降の廃止を予定しているため、今年が最後のサマータイムになるかもしれません。しかしながら、コロナウイルスの影響によって、EU圏内の国々が足並みを揃えて廃止できるか危ぶまれているため、最終的な決定は未定です。最近は、自動的に夏時間に変更してくれる機能を持つスマホがあるので、翌朝遅刻する心配もなくなりましたが、かつては、土曜の夜ベッドに入る前に家中の時計の針を1時間早めてセットするのが大変でした。いつもより1時間早起きするのも一苦労で、体が慣れるまで1週間はかかります。とはいえ、夜10時近くまで明るい長い夏の夜を満喫できる楽しみもあり、いざサマータイムが無くなってしまうとなると、面倒なことばかりじゃなかったかも…と少ししんみりした気持ちになります。

◇初出=『ふらんす』2021年3月号

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著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

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