130年以上の歴史を誇るフランス独自のノート罫線
大手スーパー、モノプリの特設コーナーにて、ずらりと並ぶ筆記用具を前にお目当てのものを探す親子
9月はフランスの新年度がはじまる月。学校も新しい1年がスタートし、真新しいカルターブルを背負った小学1年生の姿を見るにつけ、その初々しさに顔がほころびます。フランスの小・中学校と高校では、新学年に上がるたびに、Fournitures scolairesと呼ばれる学校指定の文房具や学用品を前もって買っておく必要があります。算数に使うコンパスや電卓、美術のデッサンに必要な画用紙、理科の実験用の白衣といった特別なアイテムはもちろんのこと、ボールペンや蛍光ペンの色や本数、ノートのサイズやページ数、クリアファイルのポケット数、スティックのりの本数といった普段使う文房具まで、教科ごとに、とにかく事細かに指示が出されるから驚きです。
そのため、8月に入ると、新学年向けの文房具コーナーが街の書店やスーパーなどに設けられ、学校からもらったプリントを片手に必死に買い物をする親子連れであふれます。のんびりしていると品切れになることも多いので、バカンス前に買っておいたり、郊外の大型スーパーに出向いて一気に買い揃えたりするなど、親たちは毎年、作戦を練ってのぞみます。もちろん、メーカーやブランドの指定はないので、その点はそれぞれの好みや予算に応じて選ぶことができます。
フランスの文房具は日本のものとさほど変わりがないのですが、ノートの罫線に関してはフランス独特の特徴があります。日本の定番である横罫線はこちらでは珍しく、フランスの学校では、Petits carreaux(小さい格子)、Grands carreaux(大きい格子)と呼ばれる2種類の罫線が一般的です。Petits carreauxは縦と横に5ミリ間隔の線が入った方眼紙タイプ。Grands carreauxは8ミリ間隔で縦と横に線が引かれており、さらに細い罫線が横に2ミリ幅で入っています。したがって、1つの格子が横線で4分割されている形になります。このGrands carreauxはアルファベを美しく書く手助けをする罫線として、1892年に、パリ郊外に位置するポントワーズで書店兼文房具店を営んでいたJean-Alexandre Seyèsが発明したもので、その名前を取ってセイエスとも呼ばれています。個人的には、細かな線が入っているため、書いた文字が読みづらく感じるのですが、フランス人にとってはおなじみの歴史ある罫線です。
◇初出=『ふらんす』2023年9月号