エッフェル塔に五輪のシンボルを掲げ続けるのはアリかナシか?
アルセロール・ミッタル社が製作した幅29メートル、重さ30トンの鋼鉄の飾り。残す場合は軽量化したものと差し替える予定だそう。
パリ市長のアンヌ・イダルゴが、8月31日付けのOuest-France紙のインタビューで、「パラリンピック閉会後も、エッフェル塔に飾られている五輪のシンボルを引き続き残す。IOCからも了承を得ている」と発言し、XをはじめとするSNSや各メディアで賛否両論、というよりは否定的な意見が多く聞こえる議論がフランス人の間で巻き起こり、瞬く間に3万9千もの反対派の署名が集まるという事態になりました。それを受けて9月6日に市長は改めて会見を開き、「次のオリンピックが開催される2028年まで残す」と発表。ただ、「その後も残し続けるかもしれないし、そうでないかもしれない。On verra(その時にまた様子を見ましょう)」という締めくくりの言葉に、彼女の強い願いが滲み出ていました。
とはいえ、これはあくまでもこの原稿を執筆している9月7日現在の話ですので、これからも反対派の意見が強くなれば、ひょっとして今の状況は変わっているかもしれません。開会式で登場した10人の偉大な女性像を18区のシャペル通りに、凱旋門に掲げられたパラリンピックのマークをシャンゼリゼ大通りに移動させて残す案、チュイルリー公園の聖火台も、聖火は消えるものの台は残したいという案も同時に発表されましたが、こちらは賛成ムードが強いのでそのまま実現されているでしょうか。
それにしても、エッフェル塔がパリ市民のみならず、フランス国民全員にとって、本当に特別な存在であることをつくづく感じました。フランスが誇る歴史的なモニュメントに、なぜ、いちスポーツイベントであるオリンピックのシンボルを掲げ続ける必要があるのか意味が分からない!といった意見はごもっともですが、それ以上に、イダルゴ市長が「エッフェル塔はパリ市の所有物なので、権限は私にある」といった旨をさらりと言ってのけ、国民への相談もなしに勝手に決めていたことに、多くの国民が反発を覚えたのだろうと思いました。1925年にシトロエンが25万個もの電球を使って、ロゴマークとCITROËNの名前をエッフェル塔全体に描いた大胆な広告がありましたが、こちらは人気を博し、なんと10年もの間ずっとそのままになっていました。光の美しさに当時の人々が魅せられたそうですが、今の時代では、たとえ所有者のパリ市であってもエッフェル塔を独り占めすることはできなくなりましたね。