フランスのカレンダー事情
新しい年を迎えて必ず新調するもののひとつに、カレンダーと手帳があります。近年はスマホのカレンダー機能や手帳アプリを使う人が増えてきていますが、それでも昔ながらの紙製タイプを好んで買い続けている人たちも少なくありません。紙もの大国の日本と比べると、フランスの一般的なお店で売られている手帳やカレンダーは種類も圧倒的に少なく、写真やイラストが違うだけで、中ページのレイアウトはかなり似通っています。最近はクリエイターが手がけるおしゃれなデザインも見かけますが、特にセレクト系文具店では、書き込みやすい、インクが裏にしみない、紐状のしおりがついているなどの工夫を凝らした使い勝手の良い日本のメーカーの手帳が人気を博しています。
さて、皆さんはフランスのカレンダーをご覧になったことがありますか? 私はこちらで暮らし始めるまで見たことがなく、祝日が異なる程度かと想像していたのですが、実際じっくり見てみると、案外日本のものと違っている点が多いことに気づきました。最も不思議だったのは、どの手帳やカレンダーにも1日にひとつ、BernardやCélineといった人名が必ず記されていること。これはキリスト教における聖人のファーストネームを割り当てた「聖名祝日」と呼ばれるもので、キリスト教徒であれば、その日の聖名と同じ名前の人に、おめでとうと伝える慣習が今も残っています。余談ですが、天気予報の最後に明日の聖名を教えてくれるテレビ番組もあります。意味は全く異なりますが、日本のカレンダーに記されている大安や仏滅といった六曜も、フランス人から見たらきっと不思議なものなのかもしれません。
週番号もフランスの手帳やカレンダーに欠かせない記載事項です。学校や会社などで実際に週番号を示して予定を立てることがあり、日常的にチェックする項目のひとつです。ちなみにフランスではISO週番号を採用しているので、その年の最初の木曜日(1月4日)を含む週(月曜始まり)が第1週になります。そしてもうひとつ、一番フランスらしい情報といえば、全部で6回ある学校のバカンスの期間。冬休みと春休みは、3つに分かれたゾーンによって期間が異なるため、色分けしてA、B、Cゾーンのバカンス期間をそれぞれ示しています。ところ変わればとは言いますが、カレンダーの中身を知るだけで、フランスの習慣や文化を垣間見ることができて、面白いものですね。
A4サイズのカートン紙の両面に12ヶ月の全情報が印刷されたカレンダーはかなり一般的。
◇初出=『ふらんす』2022年2月号