今年のバカンスは太陽を求めて南へ
フランスは夏休みシーズン真っ只中。学校に通う子どもたちは7、8月と約2か月の休みに入りますが、個人商店やレストラン、工場などは8月にバカンスを取るところが多く、車や人通りがぐんと減って、特にパリのような大都市はいつになく静かです。さて、ここ2年はコロナ禍とあって、止むを得ず航空チケットをキャンセルしたり、海外から国内へと行き先を変更したりと、大半の人が不完全燃焼気味なバカンスを過ごしたわけですが、そんなフラストレーションが今年の夏休みにどんな影響を与えているのか、ちょっと見てみましょう。参照するのは、個人間での不動産売買のプラットフォーム「pap.fr(de particulier à particulier)」の系列サイトで、休暇中の短期貸しに特化した「papvacances.fr」が6月に発表したデータです。今年上半期に、7月1日から8月31日の期間で賃貸予約された物件数を集計したものです。
まず、全体の予約数は2019年同時期と比較して13.7%減。コロナ以前のような勢いを取り戻すにはまだ少し時間がかかりそうです。今年、最も数字を伸ばしたのがコート・ダジュールで、2019年に比べて30.6%も予約数がアップ! 他にもコルシカ島(20.3%増)、ラングドック(7.5%増)と、いずれも地中海沿岸の地域が増加傾向にあります。もちろん海だけでなく、山の人気も高く、ヴォクリューズやアルデッシュ、オート・サヴォワといった気候の良い南部に予約が集中する結果となっています。鬱屈とした気分を吹き飛ばすべく、とにかく太陽を求めて南へと向かいたい! という強い気持ちが表れているようです。それを裏付けるかのように、天候が変わりやすく、曇りや雨の多いノルマンディ(25%減)やブルターニュ(10.1%減)といった大西洋側の北西部の地域は軒並み予約数が減少しています。
人気の行き先第2位にスペインがランクインしていますが、みんなのお目当てはフランス国境に近いコスタ・ブラバ。とはいえ、2019年と比較して7.4%減。また、8位にランクインしているポルトガルも、ガソリン代高騰の影響で車移動の人たちが敬遠したためか、32.4%も減少しており、積極的に国外で夏休みを過ごそうという人は多くない印象です。
宿泊先として一軒家を求める人が14.8%も増加しているのも今年らしい傾向で、対するアパートは16%の減少。コロナ禍の悶々とした都市生活の反動から、広々とした一軒家で、大自然の中のんびりと過ごしたいという気持ちは痛いほどよく分かります。
昨年行ったカンヌのビーチ。美しい海で泳いだり、浜辺で本を読んだり、ゆったりとした時間の流れが贅沢。
◇初出=『ふらんす』2022年8月号