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「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

フランスのバカンスは読書の季節

 学校や会社が年度末を迎え、ゆっくりと1年の疲れを癒すバカンスの季節が始まります。子どもたちはほぼ2ヶ月、大人でも大抵の人が3週間~1ヶ月の夏休みを取るフランスでは、日常を離れて大自然の中で過ごす人たちが多いです。そんな彼らが出発前に買いに走る物といえば、水着や日焼け止めクリーム、虫除けスプレー、キャンプ用品などが挙げられますが、行き先が海や山、国内外に関わらず、バカンスの必需品として外せないアイテムがあります。それは、滞在先で読むための本! 一般的に読書好きと言われるフランス人ですが、夏休みなどのバカンスシーズンにはその量が倍以上に増えるというデータがあるほど、本は長期休暇に欠かせない物なのです。読書の秋ならぬ、読書の夏というわけです。


総合メディアストアFNACに設けられた文庫本コーナー

 フランスの電子書籍サービスYoubooxが2020年に行ったアンケートによると、69%の人が「夏休み中はいつもより多く本を読みたい」と答えており、32%が2冊、29%が3冊を目標に掲げています。普段から読みたいが本があっても、日々の忙しさに追われて、なかなか腰を落ち着けて読書をする時間が取れないと感じている人が多いようです。仕事や子育てのスイッチを一旦オフにして、好きな本の世界に心置きなく没頭できる時間こそがバカンスの醍醐味!という感覚はよく分かる気がします。実際に夏のビーチでは、Livre de pocheと呼ばれる安価な文庫本を寝そべって読んでいる人々の姿をよく目にします。

 夏休み前には、「この夏に読みたい本」といった特集が様々なメディアで組まれたり、書店ではイチオシの文庫本コーナーが特設されたりします。話題の小説やサスペンス、推理物、コメディタッチの軽めの物語がバカンス本として人気ですが、この機会にと、古典の名作を手にする人もいます。旅行の時にこそ便利な電子書籍ですが、その普及率は低く、フランス国立書籍センター(CNL)が発表した2020年の調査によると、電子書籍利用者は23%足らずで、83%もの人が普段から紙の本を読んでいると答えています。庭の木陰で涼みながらページをめくったり、夜寝る前のひとときに少しずつ読み進めたり、読書の時間は昔から変わらぬフランスのバカンスの風景のひとつで、たとえ重くてかさばろうとも、そんなノスタルジックな気持ちから紙の本を旅行鞄にしのばせる人が多いのかもしれません。

◇初出=『ふらんす』2021年7月号

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著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

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