白水社のwebマガジン

MENU

「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

BHVにSheinがついにオープン! その後の反響はいかに?

 先月号のアクチュアリテで、パリの老舗百貨店BHVが中国の大手ファストファッションブランドShein(シーイン)を迎えるというニュースをお伝えしましたが、これにまつわる騒動は日に日に大きくなっています。BHVの決定に反対を唱え、「メイド・イン・フランスを守れ」「Sheinは現代の奴隷制度だ」「地球もフランスのファッションも破滅する」といったプラカードを掲げた人々が店舗周辺に集まり、警察が出動するほどの熱を帯びた抗議活動が連日行われていました。また、前回すでにいち早く撤退を表明した既存テナントの名前を挙げましたが、11月に入り、フランスを代表するブランドagnès b.(アニエスベー)もBHVから離脱することになり、老舗として築き上げてきた信頼や「フランスらしさ」がさらに大きく揺らいだ印象を受けました。

 さらに、実店舗だけでなく、Sheinのオンライン販売についてもフランス政府が問題視する動きが出てきました。幼い女児の顔を模したセックスドールや模造武器などの販売が確認されたことから、政府はプラットフォームの一時停止措置を命じ、Sheinは該当カテゴリーを削除して運営を再開するという対応を迫られました。フランス経済省は、EU全体でも調査が必要とし、この問題が欧州規模の議論に発展する可能性もあるのでは?と見られています。

 こうした強い反発をものともせず、BHVは決定を翻すことなく、11月5日の13時に世界で初めて、Sheinのアイテムを直接販売する常設店舗(東京の店舗はショールームでオンライン販売のみ)を6階の1000m2にも及ぶフロアにオープンしました。ゼネラルディレクターがスタッフたちと共にカウントダウンを行い、テープカットで祝う華やかなムードのなか、メインエントランスのあるリヴォリ通りには開店前から100人を超える長蛇の列ができました。運営側の発表によると、開店数日で5万人以上の来場者を記録したとのことで、出だしは好調といったところでしょう。テレビのインタビューを見る限り、「Sheinはよく利用していたので実店舗ができてうれしい」、「他にも規制すべきブランドは多くあるし、これだけ安い服が買えるから批判できない」といった好意的な意見や、「想像以上に高くて、これじゃ今までのファストファッションブランドと変わらない」、「メンズのスペースがとっても小さくてがっかりした」といった落胆の声が入り混じり、実際にショッピングに訪れた人々の反応はさまざまでした。批判する人々と同時に、購買する人々が存在する、この矛盾ともいえる状況こそ、今のフランス社会における消費の現実を象徴しているように感じます。

 オープン直後のこの空気感、Sheinへの人気や関心が今後どのように変わっていくのか。そして、今年170周年を迎える老舗百貨店BHVが、どのような局面を迎えるのか、まだまだ目が離せません。

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2026年1月号

ふらんす 2026年1月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

白水社の新刊

まいにちふれるフランス語手帳2026

まいにちふれるフランス語手帳2026

詳しくはこちら

白水社の新刊

「フランス文学」はいかに創られたか

「フランス文学」はいかに創られたか

詳しくはこちら

ランキング

閉じる