フランスで作る、ゆるーいおせち料理
カワカマスのすり身に小麦粉や卵などを混ぜ合わせて円筒形にまとめたクネルを湯がき、ザリガニのナンチュアソースをかけてオーブンで焼いたリヨン名物
Bonne année ! 私たちが担当した巻頭特集「フランスの歳時記 12か月の過ごし方」でも少し触れていますが、こちらでは正月三が日を休む習慣がないため、12月31日や1月2日が平日に当たる年は、おとそ気分を楽しむ間もなくあっけなく正月が終わってしまいます。そして、1月上旬ぐらいまでツリーを飾っている家庭がほとんどなので、大晦日や元日になっても、クリスマスムードが続いている感じがします。
もちろん、フランスでクリスマスが大切な行事であるのは自然なのですが、日本で生まれ育った私としては、正月らしいことをしてようやく、新年を迎えたなぁと実感できる気がします。毎年必ずするのは、新品の手帳を開いて、最初のページに新年の抱負を書き込むこと。子供の頃のように書き初めというわけにはいきませんが、少しだけ身が引き締まります。
日本の正月らしさを感じられるものといえば、お雑煮やおせち料理といった料理の数々。お雑煮は、切り餅さえ買っておけば、スーパーに並ぶ食材と基本の調味料でそれなりに形になるのですが、おせち料理となるとなかなかハードルが上がります。それでもゆるーく、できる範囲で頑張ります。見栄えのする大海老はフランスでも手に入りやすいので欠かせない一品。大根が買えない場合は、カブで代用して紅白なますを作ります。かまぼこは売っていたとしても高級なお値段なので、surimiと呼ばれるいわゆるカニカマで良しとします。フランスでは付け合わせとして食される茹で栗の瓶詰めを利用して、patate douce(さつまいも)と合わせて、栗きんとんを作るのも可能。
今回ぜひ試してみたいなと思っているのが、リヨン名物のquenelle(クネル、魚のすり身料理)をはんぺんの代わりにして、伊達巻を作るという技。在仏日本人のおせちアイデアのひとつとして、ネットでよく見かけます。数の子を買うのは難しいですが、いくらや帆立などで豪勢な感じをプラス。重箱はないので、家にある小皿に色々盛り付けたフランス式のおせち料理の出来上がりです。ほかにも、サーモンの切り身に塩をすり込んで数日おいて塩鮭を作ったり、鴨肉とポワロー葱を焼いて、鴨南蛮そばを作ったりと、フランスにいながらにして、自分なりのお正月を楽しんでいます。
◇初出=『ふらんす』2024年1月号