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「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

墓前には菊の花を

 秋もすっかり深まり、冬の足音すら聞こえそうな今日この頃。あと数日もすれば、街のあちこちにイルミネーション用の照明が設置され、点灯を待つばかりとなるでしょう。11月に入ると、お店はすでにクリスマス商戦のモードに入り、いつも以上にバラエティに富んだ商品が並びます。今のうちにプレゼントを買っておくのが賢い方法なのですが、なぜか毎年、直前になってあたふたしながら色んな店をはしごする、という失敗を繰り返してしまいます。今年はなおさら、密を避けるべく、早めに準備したいものです。

 さて、日本では3月と9月のお彼岸、そして8月のお盆の時期にお墓参りをする人が多いと思いますが、フランスでは11月がお墓参りのシーズンです。11月1日の「諸聖人の日Toussaint」は、カトリック教会がすべての聖人と殉教者をたたえる記念日で、フランスの祝日となっているため、家族そろって先祖のお墓参りをする習慣があります。その際に、墓前にたむけられる供花として一般的なのが菊の花。この菊の花をお供えする風習がフランスで始まったきっかけは、11月のもうひとつの祝日である「第一次世界大戦休戦記念日Armistice」に関係していると言われています。


11月1日の諸聖人の日、お墓参りをするのが習わし

 1918年11月11日、フランス北部のコンピエーニュの森にて、フランスやイギリスをはじめとする連合軍とドイツとの間で休戦協定が結ばれました。その翌年、当時首相を務めていたジョルジュ・クレマンソーが、「亡くなった戦士らの墓には菊の花を供えよう」と国民に提案し、以来、この風習が根付いたそうです。理由は異なりますが、日本との共通点がこんなところにあるなんて、面白いですよね。菊の花以外では、シクラメンやカルーナ、クリスマスローズといった寒さに強い花がフランスでおなじみの供花です。白や淡い色よりも、ピンクやオレンジ、黄色などの色鮮やかな花々を選ぶ人が多いようで、この時期の墓地はいつもよりも明るい雰囲気が漂います。

 毎年、11月11日の祝日には、終戦を記念し、この戦争で犠牲となった140万人もの戦士たちを偲んで、大統領参列のもと、凱旋門の下に設けられた「無名戦士の墓」にて式典が行われるほか、パリ以外のフランス各地の市町村でも同様のセレモニーが行われます。フランスにとって未曾有の戦死者数を記録した第一次世界大戦の悲劇は、多くの人々の胸に刻まれ、これからも語り継がれてゆくことでしょう。

◇初出=『ふらんす』2020年11月号

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著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

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