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「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

大人の方が楽しんでいる!? アドヴェント・カレンダー

 この季節のお楽しみといえば、やはりクリスマスですが、その日を指折り数えて待つ間、アドヴェント・カレンダー(Calendrier de l’avent)というもうひとつのお楽しみがあります。厚紙でできた箱の側面に付いている、12月1日から24日(または25日)までの日付が記された小さな扉を開けると、1日ごとにお菓子やおもちゃなど、ちょっとしたプレゼントが隠れている仕組みが定番です。欧米では昔からおなじみの風習ですが、最近は日本でも人気が高まってきているのでご存じの方も多いでしょう。

 元々は、子供たちのために家庭で手作りをしたり、大手のお菓子やおもちゃメーカーが工夫を凝らしたものを販売したりするのが一般的でしたが、10年ほど前から大人向けアドヴェント・カレンダーが出現し、その人気は年々増すばかり。今では子供向け以上に多彩なジャンルのものが発売されています。中でも最も人気なのは、有名ショコラティエやパティスリー、老舗の紅茶ブランドが提案する高級グルメ系カレンダー。小窓を開けると、上質なショコラや焼き菓子が入っているなんて、朝から幸せな気分になれそうです。他にも、ジャムの小瓶やワインのミニボトル、さまざまな種類のチーズ詰め合わせなどがあり、いろんな味を少しずつ試せるところも魅力です。


ショコラやキャンディなどを詰め合わせたアドヴェント・カレンダーが並ぶ老舗ショコラティエのショーウインドウ。

 人気ブランドのコスメやスキンケア商品、香水、石鹸、アロマキャンドルといった美容系カレンダーの需要も高く、毎日違うケアや香りを楽しめるだけでなく、通常の価格よりもかなり割安であるという、日本の福袋のようなおトク感も人気の理由です。カレンダーとはいえ、今どきはパッケージもかなり進化していて、ドールハウスのように観音開きの家の形になっていたり、立派な化粧箱に華やかなイラストが描かれていたり、クリスマスが終わっても大切に取っておきたくなる美しさです。そして、進化の最新版ともいえるのが、オンラインショップなどが提案するデジタルのアドヴェント・カレンダー。該当する日にちをクリックすると、割引クーポンや賞品が当たる仕掛けになっていて、企業プロモーションの一環としてメジャーになりつつあります。

 冬の朝、ワクワクしながら小さな窓を開けていた子供時代の気持ちは、大人になっても変わりません。疲れが溜まりがちな年末に自分を元気づけてくれるご褒美として、アドヴェント・カレンダーを選んでみませんか?

◇初出=『ふらんす』2022年12月号

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著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

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