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中条志穂「イチ推しフランス映画」

映画『マーズ・エクスプレス』


© Everybody on Deck - Je Suis Bien Content - EV.L prod - Plume Finance - France 3 Cinéma - Shine Conseils - Gebeka Films – Amopix

監督:ジェレミー・ペラン Jérémie Périn
アリーヌ・ルビー:レア・ドリュッケール Léa Drucker
クリス・ロイジャッカー:マチュー・アマルリック Mathieu Amalric
カルロス・リヴェラ:ダニエル・ンジョ・ロベ Daniel Njo Lobé

2026年1月30日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開

配給:ハーク/トムス・エンタテインメント

[公式HP] https://marsexpress.jp/

 大友克洋の『AKIRA』や押井守の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』に影響を受けたジェレミー・ペラン監督による、フランス発のSFアニメーション映画。

 時は2200年。人間とアンドロイドが共存し、地球と火星を自由に行き来できる未来。地球での任務を終えて火星に戻った女性探偵アリーヌとアンドロイドの相棒カルロスは、失踪した女子大生ジュンの捜索を依頼される。サイバネティックス(ロボット工学)を専攻するジュンがルームメイトともども行方不明になり、ジュンは大学のロボットを「脱獄」させた嫌疑をかけられていた。アリーヌらはジュンの部屋に向かい、天井裏に隠されたルームメイトの死体を発見する。ほどなくアリーヌは、ジュンがアンドロイドの売春クラブで違法に金を稼いでいるという情報を得る。ジュンは学費を払うために自分のコピーアンドロイドを作り働かせていた。だがアリーヌたちがジュンを連れ出そうとした矢先、何者かがジュンの命を狙いにやってくる。連中の目的は何なのか? 巨大企業の陰謀が明らかにされ、人間とアンドロイドの共存社会の崩壊が始まるのだった……。

 ペラン監督は、すでに中編アニメーションでその地位を揺るぎないものにしているが、長編デビューの本作では、疾走感のある筋運びとスタイリッシュな映像により、サイバーパンクの世界観を壮大なスケールで描いている。

【シネマひとりごと】

 本作は未来の宇宙が舞台で、少々頑固だが有能な人間女性のアリーヌと、ちょっと間の抜けたところがあるアンドロイドのカルロスがバディを組んで私立探偵業を営んでいる。この設定は清水玲子の漫画『竜の眠る星』と『ミルキーウェイ』を思い出させる。地球で探偵業を営むアンドロイドの二人組、有能なエレナとお人好しのジャックの話で、彼らが調査依頼を受けて別の惑星へ向かうという、ハードボイルドかつサイバーパンキッシュな傑作だ。ちなみにエレナとジャックは二人とも男性アンドロイドの設定である。永遠の命を持つアンドロイド同士の匂わせ恋愛の要素も絡んでいて、今から25年前の作品ながら時代を先取りしている。一方の『マーズ・エクスプレス』は、人間女性とアンドロイド男性の組み合わせではあるが、性別・人種(?)を超えた強い信頼で結びついている。とにかく主人公のアリーヌがカッコいいったらない。『キル・ビル』や『バイオハザード』のヒロインを思わせ、常に冷静かつ無表情で、並外れた身体能力を兼ね備えた、まるでアンドロイドのような人間なのである。逆に、アンドロイドのカルロスは、離婚した妻や娘にいまだに思いを引きずるような人間臭さがある。役割が逆転したかのような二人が、連携プレーで巨大な悪に敢然と立ち向かうクライマックスが圧巻だ。緻密かつクールな映像に目を奪われ、もう一度見たいと思わせる。まぎれもなく『AKIRA』以来の高揚を与えてくれるSFアニメーションだ。

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著者略歴

  1. 中条志穂(ちゅうじょう・しほ)

    翻訳家。共訳書コクトー『恐るべき子供たち』、ジッド『狭き門』

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