笑いと感動の映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』
映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』
© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS
監督・脚本:セドリック・ル・ギャロ Cédric Le Gallo/マキシム・ゴヴァール Maxime Govare
マチアス・ル・ゴフ:ニコラ・ゴブ Nicolas Gob
ジャン:アルバン・ルノワール Alban Lenoir
2021年7月9日(金)より全国順次公開
配給:ポニーキャニオン、フラッグ
[公式HP]shinyshrimps.jp
LGBTのための世界的なスポーツの祭典「ゲイゲームズ」への出場をめざす、ゲイの水球チームと異性愛者であるコーチの友情を爽やかに描いた笑いと感動の映画である。
オリンピック銀メダリストの水泳選手マチアスは、同性愛者への差別発言がもとで世界大会の出場資格を剥奪されてしまう。再び出場資格を得るための条件は、ゲイの水球チームのコーチになり、チームを3か月後の大会、ゲイゲームズに出場させることだった。だが、派遣された先は弱小チーム「シャイニー・シュリンプス」。勝ち負けにこだわらず、気楽に水球を楽しむお調子者の集まりで、勝つことだけを人生の目標にしてきたストイックなマチアスとは正反対の連中だった。適当にコーチをして、早々の復帰をしたいと考えていたマチアスだが、それぞれ悩みを抱えながらも自分らしさを追求するメンバーたちの自由な生き方に、人生観が変わってゆく。メンバーたちもマチアスの真剣さにこたえようと、3か月間練習を積み、大会に臨むのだが……。辛い現実をユーモアで乗り切ろうとする前向きな姿勢と、仲間同士の絆に心を揺さぶられる作品だ。実在するゲイの水球チーム「シャイニー・シュリンプス」をモデルに作られた。監督のセドリック・ル・ギャロ自身も同性愛者で、このチームに所属している。原題はLes Crevettes Pailletées(キラキラの海老たち)。
【シネマひとりごと】
本作に登場するゲイは実に多様だ。同性婚をして子供を育てる者、引っ込み思案でカミングアウトできない者、性転換手術をして女性になった者…そんな中に異性愛者のコーチが放り込まれたら、というアイデアだけですでに面白い。劇中音楽もキャッチーな選曲ばかりで、中でも印象的なのは「HOLDING OUT FOR A HERO」。映画『フットルース』の主題歌として有名だが、日本では泣き虫鬼コーチのド根性ラグビーTVドラマ『スクールウォーズ』の主題歌といったほうが分かりやすいだろう。ただし、本作の水球コーチは、何が何でもチームを花園ラグビー場、いやゲイゲームズ開催地へ行かせる!という熱血コーチではない。ゲイを冷ややかな目で見て、さっさと自分のキャリアに復帰したい男なのだ。その男の意識がどう変わるのかもこの映画の見どころである。また、4年ごとに開かれるLGBTのスポーツ大会「ゲイゲームズ」の華やかな雰囲気も見逃せない。当初「ゲイオリンピック」と名づけられるはずだったが、IOC国際オリンピック協会が名称使用を禁止した。いまや悪評高い団体のお墨付きなどもらわずに正解だったかもしれない。2018年(第10回)のゲイゲームズはフランスで行われ、出場者数は1万人を超えた。次回2022年はアジア初の開催地となる香港が決定し、その経済効果は145億円ほどと言われる。レインボーマネー恐るべし。なお、本作のヒットを受けて、2年後のチームを描いた続編が本国で今年公開予定。本邦公開も待たれるところだ。
◇初出=『ふらんす』2021年7月号
*『ふらんす』2021年7月号「対訳シナリオ」で、映画の一場面の仏日対訳シナリオを掲載しています。