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中条志穂「イチ推しフランス映画」

不朽の名作の実写映画化『家なき子 希望の歌声』

『家なき子 希望の歌声』


© 2018 JERICO - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION - NEXUS FACTORY - UMEDIAPRODUCTION UMEDIA

監督・脚本:アントワーヌ・ブロシエ Antoine Blossier
レミ:マロム・パキン Maleaume Paquin
ヴィタリス:ダニエル・オートゥイユ Daniel Auteuil
ハーパー夫人:ヴィルジニー・ルドワイヤン Virginie Ledoyen

2020年11月20日(金)より全国順次公開

配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

[公式HP]ienakiko-movie.com

 過去に何度も映画やアニメになった、エクトール・マローの不朽の名作『家なき子』の実写映画化。

 南仏の貧しい村で少年レミは優しい母親と幸せに暮らしていた。だが、パリに出稼ぎに出ていた父親が帰ってきて、レミに実は孤児だったと明かし、旅芸人ヴィタリスから金銭をもらってレミを譲渡してしまう。ヴィタリスは犬のカピ、猿のジョリクールとともに各地を巡業しており、レミもその一員となった。かつて高名なヴァイオリン奏者だったヴィタリスは、レミの歌の才能を見抜き、読み書きを教え、愛情深く導く。レミはいつしかヴィタリスを父親のように感じていた。そんなある日、レミたちは富豪のハーパー家の娘、リーズの誕生会に呼ばれて芸を披露する。リーズはレミが気に入り、ハーパー夫人はレミを手元に置きたいと考えるが、レミはヴィタリスとの旅のほうを選ぶ。旅を続けるなか、さまざまな苦難がレミを襲うが、ある日、リーズから、ロンドンにレミの本当の母親がいるという知らせが入る。だが、ロンドンで待っていたのはとんでもない罠だった……。レミを演じたのはオーディションで選ばれた11歳の少年マロム・パキン。脇をずらりとフランスの人気実力派俳優で固め、壮観である。南フランスの美しい風景と、パリ・オペラ座合唱団のボーイソプラノもつとめた主人公の澄んだ歌声に心が洗われる。原題はRémi sans famille(家なき子レミ)。

【シネマひとりごと】

 本作『家なき子』には、ダニエル・オートゥイユはじめ、ジャック・ペラン、ヴィルジニー・ルドワイヤンなど、綺羅星のごとき名優たちが顔を揃えるが、ひときわ目を引くのは主人公の育ての母親を演じたリュディヴーヌ・サニエの転身ぶりだ。彼女が初めて注目されたのはフランソワ・オゾン監督の『焼け石に水』だった。あどけなさと奔放さが同居する圧倒的な存在感で新世代の女優到来を印象づけた。以来、オゾン監督一番のお気に入り女優となり、『8人の女たち』では、カトリーヌ・ドヌーヴやイザベル・ユペールなど錚々たる面々に交じり、強烈な個性のぶつかりあいにも臆することなく、持ち前の童顔で、こましゃくれたティーンエイジャーを好演した。続く『スイミング・プール』では、弾けるばかりの若い肉体を武器に、道徳観に欠ける怖いものなしの大胆な役で、抗いがたい魅力を全身から漂わせていた。コケティッシュな雰囲気が珍重され、ハリウッドからもお呼びがかかり、『ピーターパン』の妖精ティンカーベル役にも抜擢された。少々品のない奔放なキャラが彼女の売りだったが、40を過ぎ、ここ最近は大人しい役が多くなった。是枝裕和監督の『真実』でも小さな役で出演していたが、本当にサニエなのか地味で目を疑うほどだった。本作でも生活に疲れた愛情深い農民の女を堅実に演じている。顔だけの男と言われる、サニエの元夫のモデル兼俳優ニコラ・デュヴォシェルの軸のぶれた役選びに比べ、確かなキャラ転換を行うサニエ。その女優魂にこれからも期待したい。

◇初出=『ふらんす』2020年11月号

*『ふらんす』2020年11月号「対訳シナリオ」で、映画の一場面の仏日対訳シナリオを掲載しています。

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著者略歴

  1. 中条志穂(ちゅうじょう・しほ)

    翻訳家。共訳書コクトー『恐るべき子供たち』、ジッド『狭き門』

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