白水社のwebマガジン

MENU

中条志穂「イチ推しフランス映画」

映画『サムシング・エクストラ!』


© 2024 CINE NOMINE - M6 FILMS - AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA – SAME PLAYER - KABO FILMS - ECHO STUDIO - BNP PARIBAS PICTURES - IMPACT FILM

監督:アルテュス Artus
パウロ/シルヴァン:アルテュス Artus
“ラ・フレーズ”/オルピ:クロヴィス・コルニアック Clovis Cornillac
アリス:アリス・ベライディ Alice Belaïdi

2025年12月26日(金)全国ロードショー

配給:東和ピクチャーズ

[公式HP] https://somethingextra-movie.jp/

 昨年、フランス人の7人に1人が見たという大ヒット映画。サマーキャンプに参加した障害者たちと、そこに紛れ込んだ泥棒親子とのおかしくも感動的な交流を描いている。

 パウロとその父ラ・フレーズはちょっと間抜けな泥棒の親子。ある日、宝石店に強盗に入り、警察の追っ手から逃れる途中、サマーキャンプに出発する障害者の団体に出くわす。すると、キャンプの引率者がパウロらを障害者とその介助者と勘違いして、声をかけてくる。パウロ親子は身を隠すのに幸いと、そのまま彼らとともにサマーキャンプへ行くことになる。人のいいパウロは、障害者たちのズレた会話や突拍子もない行動に驚きつつも、ほどなく彼らとの生活になじみ、個性豊かな面々との交流を楽しむ。一方、自分勝手に生きてきた父親のラ・フレーズも、最初は障害者を適当にあしらっていたが、徐々に彼らと心を通じ合わせてゆく。だが、警察の手は人里離れた平原のキャンプ場まで伸びてくるのだった……。

 障害者を特別扱いせず、それぞれの個性を笑い合える主人公たちの姿に、風通しの良い寛大さを感じる。出演する11人は実際に障害のあるアマチュア俳優で、主人公パウロを好演したのも、実人生でパラリンピックの広報活動や障害者支援を行っているアルテュス監督自身である。原題は「Un p’tit truc en plus(ささやかな付加価値)」。

【シネマひとりごと】
 障害者との交流を描いた主な映画というと、少し昔の作品になるが『レインマン』や『ギルバート・グレイプ』を思い出す。ダスティン・ホフマンやレオナルド・ディカプリオが真に迫って知的障害者を演じ、涙なしでは見られない感動作だ。いずれも、障害者とともに暮らすことの困難と苦悩、そして、心が通じ合う過程をシリアスに描いている。一方、大ヒットした『最強のふたり』は、障害者に気を使いすぎたり避けようとしたりせず、からかったり軽口をたたきあえるような新たな交流のしかたを提示し、人々の笑いと共感を呼んだ。本作は『最強のふたり』の系譜を継ぎ、障害を笑いで包み込むような軽いタッチで描いている。ただし、演じているのは実際に障害のあるアマチュア俳優たちである。主人公が障害者の顔真似をする場面もあり、倫理的に大丈夫なのだろうかと心配になるが、ラース・フォン・トリアー監督の問題作『イディオッツ』(1998)に比べればなんのことはない。奇人のトリアー監督が何をしてももはや驚かないが、タブーの中でもとりわけアンタッチャブルな領域に踏み込んだ映画だ。知的障害者のふりをして人々の偽善を暴く集団「イディオッツ」の不謹慎きわまりない映像を見せられた後では、本作『サムシング・エクストラ』でのちょっとしたからかいも健全な対応のように思えてくる。少々、理想論ではあるが、障害者とのハードルがお互いに少しずつ下がるような、無理のない関係を築けるんじゃないかと思わせてくれる温かい映画だ。

タグ

バックナンバー

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2026年2月号

ふらんす 2026年2月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

白水社の新刊

「ふらんす」100年の回想

「ふらんす」100年の回想

詳しくはこちら

白水社の新刊

まいにちふれるフランス語手帳2026

まいにちふれるフランス語手帳2026

詳しくはこちら

ランキング

閉じる