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中条志穂「イチ推しフランス映画」

日本の大ヒット作のリメイク『キャメラを止めるな!』

映画『キャメラを止めるな!』

© 2021 - GETAWAY FILMS - LA CLASSE AMERICAINE - SK GLOBAL ENTERTAINMENT - FRANCE 2 CINÉMA - GAGA CORPORATION

監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス Michel Hazanavicius
レミ:ロマン・デュリス Romain Duris
ナディア:ベレニス・ベジョ Bérénice Bejo
日本人プロデューサー:竹原芳子(どんぐり)

2022年7月15日(金)全国順次公開

配給:ギャガ

[公式HP]gaga.ne.jp/cametome/

 『アーティスト』でアカデミー賞監督賞を射止めたミシェル・アザナヴィシウスが、日本の大ヒット作『カメラを止めるな!』をリメイクした作品。

 企業の宣伝映像製作などで生計を立てるパッとしない映画監督レミは、ある日、B級映画専門チャンネルのために、日本で大ヒットした映画のリメイクを依頼される。だが、撮影にあたって日本のプロデューサーから出された条件は、ワンカットで生中継というとんでもないものだった。レミは依頼を断ろうとしたが、元女優の妻ナディアにチャンスだと勧められ、映画監督志望の娘にもいいところを見せようと一念発起して引き受ける。ところが、わがままな出演者や使えないスタッフに振り回され、リハーサルまで漕ぎつけるのも苦労の連続だった。しかも本番当日、監督役の俳優が交通事故で入院、急遽、代役としてレミが自ら演じるはめになる。果たしてカメラを止めることなく生中継を無事終わらせることができるのか……? 人気俳優ロマン・デュリスが主役の監督を演じ、オリジナル版「カメラを止めるな!」に出演した竹原芳子(どんぐり)も同じ役で出演している。今年のカンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、観客を大いに沸かせた。原題はCoupez !(カット!)。

【シネマひとりごと】

 300万円という超低予算で作られた日本の映画『カメラを止めるな!』は結果的に31億以上の興行成績を収め、世界中で大きな話題を呼んだ。それにしても、アカデミー賞受賞までしたアザナヴィシウス監督がなぜ「カメ止め」をリメイク?と不思議だったが、本作を見ると、「カメ止め」がいかにアザナヴィシウスの遊び心を刺激したのか分かる。もともとアザナヴィシウスはアカデミー賞を獲るような巨匠感漂う監督ではない。『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』という、007をもじったスパイ映画のパロディが世界で大ヒットしたのがキャリアの始まりだ。名優ジャン・デュジャルダンがショーン・コネリー風のスパイに扮しているだけで笑いがこみあげる。この監督はとにかくパロディものを作るのが格別にうまい。アカデミー賞を獲得した『アーティスト』も昔のサイレント映画そのもので、往年を彷彿させる完璧な画面作りと、俳優の芸達者にアカデミーの審査員たちもころっと騙されて(?)しまったようだ。『キャメラを止めるな!』も、劇中劇のエンドロールの赤い手書き文字や、昭和テイストあふれる音楽の使い方に、かつての日本の東映映画の匂いが感じられ、映画ファンはニヤリとするだろう。また、アザナヴィシウスはユダヤ系ということもあって、あえて人種的偏見やタブーもコメディにしてしまう。本作でもロマン・デュリス扮する主人公が竹原芳子(どんぐり)を相手にささやかなタブーを犯す。さて、どんぐりの反撃はいかに……?

◇初出=『ふらんす』2022年8月号

『ふらんす』2022年8月号「対訳シナリオ」で、映画の一場面の仏日対訳シナリオを掲載しています。

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