映画『男と女 人生最良の日々』
映画『男と女 人生最良の日々』
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma
+ 監督・脚本:クロード・ルルーシュ Claude Lelouch
+ ジャン・ルイ:ジャン=ルイ・トランティニャン Jean-Louis Trintignant
+ アンヌ:アヌーク・エーメ Anouk Aimée
+ 音楽:フランシス・レイ Francis Lai
2020年1月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開
配給:ツイン
[公式HP]http://otokotoonna.jp/
▼予告編
https://youtu.be/0AQXZsKSyTs
かつて主題歌とともに全世界で大ヒットしたクロード・ルルーシュ監督の『男と女』。その主役のジャン=ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメが50年後に再会し、再び愛を紡ぐ感動作である。
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma
ある老人施設で余生を送るジャン・ルイはかつて愛した女性アンヌのことばかり話す日々を送っていた。記憶が混濁するジャン・ルイを心配した息子アントワーヌは、父の想い人アンヌのもとを訪ね、父親に会ってほしいと頼み込む。プレイボーイのジャン・ルイと、いい別れ方をしなかったアンヌは気が引けたが、彼に会いに行く。だが、ジャン・ルイはアンヌのことが分からず、彼女に向かって他人に話すように、アンヌとの思い出を語り始める。ジャン・ルイとの対話で、愛し愛された日々を思い出したアンヌは、彼を思い出の地ノルマンディーへ連れ出すのだった……。
ルルーシュは当時のスタッフ・キャストを再結集し、『男と女』(66)の映像を交え、容赦ない時間の経過を冷静に見つめながら、昔日の美しく愛おしい気持ちを鮮やかに蘇らせた。原題はLes plus belles années d’une vie(人生最良の歳月)。
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma
© 2019 Les Films 13 - Davis Films - France 2 Cinéma
【シネマひとりごと】
ルルーシュ監督は『男と女』と本作の間に実は『男と女Ⅱ』(87)を撮っている。主人公たちの20年後を描いたが、『男と女』の後、二人はすぐに別れ、男は親子ほど年の違う娘と暮らし、女は映画製作者と再婚したがふたたび未亡人になったという設定だ。ジャン・ルイはナイスミドル、今風に言えばイケオジとなり、アンヌは50代の美魔女。相変わらず髪をかきあげ、手指を嚙むしぐさでまたしてもジャン・ルイを魅了、焼けぼっくいに火のいつか来た道へ……。映画製作者となったアンヌがジャン・ルイとの恋物語を劇中で映画化する、という挿話もあり、アンヌに「プラットホームの抱擁で終わるラストは甘すぎる」とのセリフを言わせ、パルムドール受賞作『男と女』にダメ出しまでする余裕の演出ぶりだ。
本作でも『男と女』の名場面はこれでもかと回想で連発されるが、一発芸を半世紀もたせる監督の執念、いや力量にはただただひれ伏すばかり。さらに驚くべきは主役の二人だ。トランティニャン88歳、エーメ87歳、トランティニャンの素晴らしい老人演技はミヒャエル・ハネケ監督『愛 アムール』や『ハッピーエンド』で立証済みだが、いつ召されてもおかしくないヨボヨボぶりを「演技」できる役者はそういない。対するエーメも、いい女のマストジェスチャー、髪かきあげのしぐさは50年後の本作でも健在、この色気は何なんだ?『 男と女』の撮影前、すでに有名女優だったエーメは脚本を読んで「船には乗りたくない、フェリーニなら合成でやってくれる」と言い放ち、ルルーシュはエーメの降板まで考えたが、50年後も同じ役を演じられる俳優たちを主人公に据えたことがルルーシュの最大の成功だった。「映画に作者はいない、ただ重労働と多少の奇跡があるだけ」をモットーとする腰の低いルルーシュ監督。本作は時間の経過に対する最後の挑戦だというが、映画の奇跡を確実に自分のものにした。
◇初出=『ふらんす』2020年2月号
*『ふらんす』2020年2月号「対訳シナリオ」で、映画の一場面の仏日対訳シナリオを掲載しています。