映画『そして彼女たちは』

ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / Photo©Christine Plenus
監督:ジャン゠ピエール &リュック・ダルデンヌ Jean-Pierre & Luc Dardenne
ジェシカ:バベット・ヴェルベーク Babette Verbeek
アリアンヌ:ジャナイナ・アロワ・フォカン Janaina Halloy Fokan
2026年3月27日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国順次公開
配給:ビターズ・エンド
[公式HP] https://www.bitters.co.jp/youngmothers/
ベルギーの巨匠、ジャン゠ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟の最新作。妊娠した少女たちの支援施設を舞台に、そこで生きる人々の姿を生々しく描く群像劇。
ベルギーのある母子支援施設。そこでは支援員の助けを借りながら、出産・育児をする少女たちが共同生活を送っている。いま臨月のジェシカは、顔も知らない母親に会いたい気持ちを抑えられない。また、アリアンヌは産んだ子を養子に出そうと考えている。一方、赤ん坊を産んだばかりのぺルラは、少年院から出所する恋人を待っている。その他、赤ん坊誕生を期に一念発起するも薬物中毒から抜け出せない少女もいれば、就職先が見つかって母子ともに施設を卒業していく少女もいる。まだ大人になっていない若いシングルマザーたちは、戸惑いや苛立ちにかられながら誰かに支えられ、誰かの愛を求めて生きている。彼女たちの人生に希望はあるのか……? 過酷な現実を突きつけながらも、少女たちに寄り添う眼差しが温かい映画である。
ダルデンヌ兄弟の『ある子供』(カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作)は若くして父親になった青年の未熟さを描いたが、本作では対照的に、赤ん坊を育てなければならない少女たちの孤独に焦点を当てている。カンヌ国際映画祭で脚本賞とエキュメニカル審査員賞を受賞した。原題は「Jeunes Mères(若い母親たち)」。
【シネマひとりごと】
フランスやベルギーはシングルマザーが日本よりも多く、家族の多様性に寛容な国と思われているが、10代の妊娠・出産は日本同様、白い目で見られる。本作でも、貧困や薬物中毒や虐待という環境で育った少女たちが、一人で子供を産み育てなければならないという厳しい状況に置かれている。そのセーフティネットが母子支援施設だ。出産後、およそ1年間、支援員の助けを借りながら、母子が一緒に施設で生活できる。本作の施設の少女たちは、互いの事情を薄々分かっていて、深入りしない程度につながっている。このゆるい関係性が心地よい。食事当番を代わったり、体調の悪い者へマッサージをしてあげたり、不実な男に本人に代わって電話をしてあげたり……経緯は違うが、みな赤ん坊を育てる重責を一人で負っている同志なのだ。ダルデンヌ兄弟の作品では女性が社会的環境で不当に追い込まれ、痛めつけられることが多い。本作『そして彼女たちは』でも、ある少女は赤ん坊と恋人に囲まれ「本物の家族みたい」と喜ぶが、次の場面では捨てられるし、別の少女は優しい恋人もいて就職も住居も決まって、明るい未来と思いきや足元をすくわれる。次から次へと降りかかる災難を好んで描く監督のサディスト的資質を疑ってしまう。この不幸の連続が辛く、ダルデンヌ作品が苦手な人もいるが、本作はその辛口が、施設の女性スタッフの援助や若い母同士の連帯のおかげで若干抑えられている。ラストには希望もあり、各人の選択に正解を押し付けない寛大さが心に染み入る作品である。



