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中条志穂「イチ推しフランス映画」

映画『ARCO/アルコ』


ⓒ2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

監督:ウーゴ・ビアンヴニュ Ugo Bienvenu
イリスの声:マルゴ・リンガール・オルドラ Margot Ringard Oldra
アルコの声:オスカル・トレサニーニ Oscar Tresanini
トムの声:スワン・アルロー Swann Arlaud

2026年4月24日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国順次公開

配給:ハーク AMGエンタテインメント

[公式HP] https://arco-movie.jp/

 アニメーション界の最高峰といえるアヌシー国際アニメーション映画祭で昨年のグランプリを受賞した作品。

 今から50年後の気候変動が進んだ未来の世界。人々の暮らしはロボットなしでは成り立たなくなっていた。10歳の少女イリスは、赤ん坊の弟ピーターと、彼らを世話するロボットのミッキとともに、普段は3人で暮らしている。両親は仕事があって、家に帰ってくるのは週末のみだが、ミッキのおかげで平穏な、だが少し退屈な毎日を過ごしていた。ある日、授業を抜け出したイリスは、空から光る物体が落ちてくるのを目撃する。光を追うと、虹色のマントを纏った少年アルコがいた。彼はイリスの住む時代よりさらに未来の人間だった。アルコはすぐに未来へ戻ろうとするが、タイムトラベルに必要なダイヤを落としてしまい飛ぶことができない。アルコはイリスの助けを借りて、元の世界に戻る手段を探すが、謎の三つ子の兄弟が彼を執拗に追ってきていた……。

 本作が長編デビューとなるウーゴ・ビアンヴニュ監督は、SFを題材としながらも、どこか懐かしく温かみのあるタッチで、宮崎駿の作品を思わせるような世界を描き出す。製作に女優のナタリー・ポートマンが参加、アカデミー賞長編アニメ映画賞の最有力候補作品と言われている。

【シネマひとりごと】
 本作で、ヒロインのイリスが住む世界は、育児も家事もロボットが代行し、両親とはほとんどホログラムでしか会えない。ロボットやAIなどの技術が支配する生活は、まさに私たちの近い将来だ。一方、空から落ちてきた少年アルコの世界は全く違う。そもそも、技術が進化しすぎたせいで自然が崩壊した地球を休ませるために、彼ら未来の人々は空中のプラットフォームに暮らしているという設定なのだ。自給自足で、パソコンやスマホはなく、何か知りたければ本で探し、食事は家族そろって食べる。『ARCO』には、自然と調和した素朴な暮らしぶりに回帰せよというメッセージが込められているのかもしれない。衣服もごくシンプルで、家族全員が昔の江頭2:50を思わせるももひきライクな全身タイツを身に着けている。他の衣服はなく、飛翔するときのみ、虹色のマント姿になるという簡素さだ。ここには、技術に支配される物質文明に対して、自然さを擁護するエコロジカルな姿勢が感じられる。実際、本作の声優には、地球の気候変動や環境問題に高い関心を寄せて保護活動をしている人気俳優のスワン・アルローも参加し、セクシーな美声を聞かせる。日本では某小泉氏が「気候変動のような問題に取り組むのはセクシー」と言い放って顰蹙を買ったが、本作はそんな上っ面ではない本気の主張が伝わってくる。

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著者略歴

  1. 中条志穂(ちゅうじょう・しほ)

    翻訳家。共訳書コクトー『恐るべき子供たち』、ジッド『狭き門』

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