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「アクチュアリテ 社会」荻野雅代(トリコロル・パリ)

『星の王子さま』は永遠に

 6月29日は「星の王子さまの日」です。これは、フランスを代表する不朽の名作『星の王子さま』の作者、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの誕生日にちなみ、全ての人間と動物、植物がより良い環境で共存できる世界を願うための日として、サン=テグジュペリ財団が定めた国際的な記念日です。

 1943年にアメリカで初出版され、フランスでは1946年4月にガリマール社から刊行された『星の王子さま』は、方言や少数言語を含めた500近くにのぼる国や地域の言葉の翻訳版が存在し、聖書に次いで最も多くの言語に翻訳された本として知られています。出版から80年近く経つ現在も、各国合わせて年間500万部売れ続けており、累計販売部数2億冊という記録はもちろん世界でトップ。さらに、『星の王子さま』をテーマにした絵本や小説、考察本、バンド・デシネといった新しい書籍の発売、映画や舞台の上演、展覧会の開催など、毎年常に何かしらの形でこの作品に触れる機会があることを考えると、地球上で最も愛されている物語と言っても過言ではないでしょう。ちなみに今、パリ装飾芸術美術館にて『星の王子さま』の直筆原稿やスケッチ画を展示した展覧会が開催(6月26日まで)されており、アメリカのブロードウェイではミュージカルが公演中です。

 …と、こんなに数字ばかり並べてしまっては王子さまに「キノコだ!」と言われてしまいますね。数字は単なる結果であって、この作品がこれほどまでに長い間、世界中の人たちを魅了し続けているのはやはり王子の真っ直ぐな心と、それがそのまま表れたような飾り気のない言葉の数々でしょう。どんな風にも解釈できるフレーズが多いため、原文で読むフランス人でさえも、幼い頃はさほど意味が分からず大して面白くないと感じる人もいます。そして、記憶の底にかすかに残る言葉や場面を折に触れて思い出し、大人になって読み返して、また違った味わいを再発見する人が多いようです。

 原題は« Le Petit Prince »で、直訳すると「小さな王子」。『星の王子さま』という日本語タイトルは、1953年に岩波書店から初の日本語版が出版された際に訳者の内藤濯氏が考えたものです。日本での著作権の保護期間が満了となった2005年以降は、異なる訳者が手がけた新訳版が10冊以上出版され、題名も中身の翻訳も様々なので、原文と照らし合わせながら読み比べてみても楽しいです。


中央は1950年代に出版された1冊。70周年には名優ジェラール・フィリップの朗読CD付きも登場した。

◇初出=『ふらんす』2022年6月号

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著者略歴

  1. 荻野雅代(おぎの・まさよ)(トリコロル・パリ)

    パリとフランスの情報サイト「トリコロル・パリ」を運営。著書『おしゃべりがはずむ フランスの魔法のフレーズ』

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