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「韓国語の単語はこう覚える~外来語編~」河崎啓剛

第1回 外来語に注目する

 この連載は、「韓国語の単語を効率的に覚える方法」を真正面から解説しようというものです。特に入門レベルや初級レベルの方にこそ読んで欲しいと思っていますが、中上級レベルの方はもちろん、ネイティブの方や教育関係者の方にも一読の価値ある内容にできればと考えています。
 現状の一般的な韓国語教育・教材ではあまり体系的に学ぶ機会が設けられていない事が多いけれども、「本当は韓国語を学ぶ人なら皆一度は聞いておいた方がよい話」を、ぜひ幅広い読者の方々と共有したいという思いからこの連載を始めることにしました。「単語は丸暗記しかない」という根強い固定観念を多少なりとも打破して行ければと思います。

 この連載では、まず英語由来の外来語の話をします。外来語の体系的な学習というのはどうしても軽視されてしまいがちなのですが、語学の実力をつけるという観点からは、実は非常に重要な事です。
 韓国語は、日本語と同様に英語由来の外来語抜きでは成り立ちません。分かりやすく日本語で考えてみましょう。日本語では外来語無しでは「ネットでスマホのアプリをダウンロードする」なんてそもそも表現できませんし、「ランチはピザかハンバーガーか」「セットメニューはサラダかスープか」「ドリンクはコーヒーかアイスティーか」と悩む事もできません。私たちは日常的に「リモコンでテレビをつけてスポーツニュースをチェック」したり、「チームのメンバーとミーティングしてアイデアをシェア」したり、「プランのイメージをノートにメモ」したり…と、文字通り「外来語抜きでは成り立たない」言語生活を送っていますね。
 韓国語も、このあたりの事情は日本語とだいたい同じで、ここに並べたような外来語を韓国語の語形に直せば、ほぼそのまま実践で使える韓国語単語になります。せっかく「最初から知っている」単語なので自由に使いこなしたいものですが、韓国語の正確な語形に直せるようになるには、やはりある程度の「慣れ」が必要かと思います。読者の皆さんは、これらの外来語を、すぐに韓国語の語形に直せるでしょうか?(答えはこの記事の最後)

 この連載では、英単語を韓国語の語形に変換する「対応規則」のお話を通して、「なんとなく」ではなく、効率的かつ正確に「慣れ」て行けるようにお手伝いしたいと思います。実は、もとの英語のスペルさえ分かれば(英語の正確な音はスペルでだいたい分かるので)、韓語の語形はだいたい見がつきます。
 では突然ですが、「スラムダンク」(slam dunk)、「セルフサービス」(self-service)は韓国語では何というでしょう?――答えは「슬램덩크」(スルレムドンク)、「셀프서비스」(セルプソビス)となります。仮にもし、一度もこれらの韓国語の語形にお目にかかった事がなかったとしても、実は「対応規則」を少し知っていれば、このくらいの事はすぐに見当がつくようになります。 slam dunk の場合、まず l だから ㄹㄹ に決まってますし、日本語で「ア」になっている母音は a なら大方 でしょうし、u なら ですし。あと、ちょっと細かい事ですが -nk なら -ㅇ크 に決まってますし。まあ十中八九「슬램덩크」(slam dunk)だろう、と見当がつきます。こういう事が分かっていれば、他にも例えばメロン(melon)は「멜론」、ダンス(dance)は「댄스」、バス(bus)は「버스」、等というのもすぐに見当がつきます。またself-serviceの場合は、 f なら ですし、日本語で「アー」になっているer, ur, ir, or 等は ですので、まあ「셀프서비스」でまず間違いないでしょう。同様の対応規則により、 例えばフィリピン(Philippine)は「필리핀」、ハンバーガー(hamburger)なら「햄버거」 です。

 当たり前の事ですが、韓国語の英語由来の外来語とは英語の発音を韓国語の耳で聞き取ったものですので、英語の正確な発音さえ分かれば、ほぼ自動的に韓国語の語形はわかります(慣習的な例外もそれなりにあるのですが、大抵は「日本語寄り」なのでむしろ「分かりやすい」例外になります)。「英語の正確な発音」等と聞くと苦手意識のある方も多いかもしれませんが、英単語のスペルさえわかればそれなりに正確な発音もわかりますので、英語が得意でない方でもご安心下さい。むしろ、韓国語の勉強を通じて英語の発音が上達するかもしれません
 次回以降、上で紹介したような基本的な規則を整理して行きましょう。やや言葉足らずな所も多かったので、そのあたりも少しずつ補って行きましょう。

 

※以下は本文中に並べた外来語の韓国語の語形です。
※特に入門段階の方には外来語の練習がオススメです。文字に慣れる練習がてら、使える単語をどんどん増やせて一石二鳥です。

1. (インター)ネット (internet, 인터넷), スマホ(スマートフォン) (smartphone, 스마트폰), アプリ(ケーション) (application, 어플(리케이션)), ダウンロード (download, 다운로드)
2. ランチ (lunch, 런치), ピザ (pizza, 피자), ハンバーガー (hamburger, 햄버거)
3. セットメニュー (set menu, 세트메뉴), サラダ (salad, 샐러드), スープ (soup, 수프)
4. ドリンク (drink, 드링크), コーヒー (coffee, 커피), アイスティー (iced tea, 아이스티)
5. リモコン (remote controller, 리모컨), テレビ(ジョン) (television, 텔레비전), スポーツニュース (sports news, 스포츠뉴스), チェック (check, 체크)
6. チーム (team, 팀), メンバー (member, 멤버), ミーティング (meeting, 미팅), アイデア (idea,아이디어), シェア(share, 쉐어)
7. プラン(plan, 플랜), イメージ (image, 이미지), ノート (notebook, 노트), メモ (memo, 메모)

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著者略歴

  1. 河崎啓剛(かわさき・けいごう)

    東京大学大学院総合文化研究科准教授。東京大学教養学部超域文化科学科言語情報科学分科卒業。ソウル大学校大学院国語国文学科博士課程修了。文学博士。崇実大学校日語日文学科(韓国ソウル)助教授、帝京大学外国語学部講師を経て、現職。専門は言語学、韓国語学、韓国語史、日韓対照言語学。著書に『中世韓国語感動法とは何か』(原題は韓国語)(韓国京畿道:新丘文化社、2017年)など。

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